これはかなりの掘り出し物だった。流石社会派の巨匠マイク・ニコルズ、政治の内幕を時にコミカルに、時に生々しく描きながら、完全な悪人も善人もおらず、かなりの数の主要人物それぞれにしっかり役としての見せ所と人間的深さを与えてる。コメディやドラマの要素は確かにあるが、敢えて括るならポリティカル・サスペンスの方がしっくりくるかも。名優たちによる演技合戦もすごい。特にエマ・トンプソン演じる大統領候補の妻は、自らの政治的理想、夫の裏切り、良心の呵責の中で葛藤する姿を見事に演じていて本作のMVP。ジョークもかなりダークで、笑っていいのかよと自分に突っ込みながらも笑ってしまう絶妙なさじ加減。そして2023年11月末、米大統領選が近づいている今観ると、この映画の説得力はとてつもなく強い。政治の理念、勝つために必要な腹の探り合い、マスコミの報道とそれに対応し時に有利に利用しようとする選挙運営のブレーンたち、そしてそれらに踊らされる一般市民。説教臭くならずエンタテインメントでありながら、政治そのもののあり方や国民と政治の向き合い方を今一度考えさせる秀逸な作品。
