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パリの灯は遠くのpikaのレビュー・感想・評価

パリの灯は遠く(1976年製作の映画)
3.0
見たあと寝たら悪夢見た。不穏な雰囲気の中本人はそれしか道はないとばかりの必死さで淡々と無へと帰依していく映画。アラン・ドロンは逃げるために自ら核心へと突き進んでいく。ドロンの選択に納得できるよう丁寧に描写されるため理解はできるが本質的な理解はできない。したくないと言うべきか。見たくないものを注視させられている気持ちの悪さや居心地の悪さに反吐が出そうになる。

オープニング、検査が終わり夫婦で廊下を歩いているときに窓越しの窓からワンショットで廊下を曲がってくる夫婦を追う。歪んだガラスが印象深い。
空き部屋を内覧しているとき洗面台にあったひげ剃りを持って管理人と向かい合うシーン、アランドロンは背を向け入り口側に立つ管理人は後退りする。ドロンの視点から管理人の視点へと切り替え、人物の印象をガラリと変えて見せる演出が上手い。

誤送された新聞を受け取ったあと玄関の迎えにある鏡を見た瞬間から様々な場面で鏡が出てくる。ハイライトはレストランで電話があったとボーイが呼びかけている長回しのシークエンス。ガヤガヤと食事をとる客たちのハイテンションなざわめきの中で呼びかけられる『ムッシュ・クライン』の声。直後に見渡して映る鏡の自分が他人のように見える不気味な演出が絶妙。

時折挿入される人物たちのクローズアップが凄い。友人、その妻、愛人、自分と態度には出さない感情や心理が目に宿っているようで、勝手にこちらが思い込んでいるだけかもしれないというような他者に対するイメージの脆弱さを表しているようで面白い。
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