桃子

パリの灯は遠くの桃子のレビュー・感想・評価

パリの灯は遠く(1976年製作の映画)
4.5
「冒頭とラストは衝撃的」

当然のことながら(笑)アラン・ドロン目当てで鑑賞。ジョセフ・ロージー監督作は「エヴァの匂い」に続いて2本目ということになった。
舞台はナチス占領下のパリである。ユダヤ人だとわかると拘束され連行されてしまうオソロシイご時世。冒頭シーンはかなり衝撃的である。予備知識ゼロで見たので、何のことやらすぐにはわからず、これもヨルゴス監督の映画みたいに意味不明系なのかと思ってしまった。
見進めていくうちに、だんだんとわかっていく。わかるのだけれど、今度は別の不条理を感じるはめになった。主人公のロベール・クラインの狂気にも似た妄執、これにつきる。最初はごく普通に登場する主人公が、ある出来事や事件をきっかけにどんどん変わり、追い詰められていき、あるいは壊れていくというストーリーの映画は大好物である。最初や嫌なヤツで、ラストはいい人に変わるというのも好きなのだけれど、壊れていく方が好きかもしれない。サスペンスホラーにこのパターンが多い気がする。
登場場面は少ないけれど、ジャンヌ・モローが出てくるのも嬉しい。初めてドロン様とモロー様のツーショットシーンを見たかも!
そして何よりドロン様の美しさが引き立っている。撮影当時は40代にさしかかったあたりである。すでに全盛期のぴかぴかの容姿ではなく、歳を重ねた感が出始めている。そこがいい。大人の男の色気がもわ~~っと漂っているのが見えて、どきっとしてしまう。
謎が謎を呼ぶサスペンスのような展開に、ホラー映画のようなうすら寒くなってくる要素が加わり、ラストの衝撃シーンへと突き進んでいく。見終わって、思わず最初の方のシーンを見直したのは言うまでもない。これから初めて見る方は、是非ともロベールが最初に登場するシーンをよく見て欲しい。
素晴らしい演出である。監督の手腕に脱帽した。点数が甘いのは、私がドロンとモローの大ファンだからである。大目に見てください。
桃子

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