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上意討ち 拝領妻始末のたぼのレビュー・感想・評価

上意討ち 拝領妻始末(1967年製作の映画)
5.0
三船プロダクション発足後初期の作品で、仲代達矢主演の「切腹」を執筆した滝口康彦原作の、理不尽な主命、上意による悲劇の顛末を描いている。

全体的に重厚で、三船敏郎はもちろんのことだが、仲代達矢や加藤剛、司葉子、若かりし頃の市原悦子と俳優陣も素晴らしい。

撮影秘話や、エピソードを知れば知るほど様々な想いが詰まった奥深い作品であり、切腹(個人的には上意討ちが先だと思っていたが、作製年代は切腹より後で驚いた)と似たような系統で、封建制の残酷的な本質と矛盾を強く鮮明に体現。

本作は笹原家、三船敏郎演じる笹原伊三郎を主体に話の展開がなされるが、シグルイにも笹原修三郎なる侍が登場する。
名前も内容も、どちらも残酷がテーマと、似通っておりそういった部分に惹かれたこともあるがとにかく凄まじいの一言に尽きる。

因みに原作の「拝領妻始末」は史実をオマージュしたものであるため、如何に凄惨だったか映画でより感じ取ることができるだろうと思う。


また、三船敏郎の演技を大根と言う人も居るが撮影にはどの俳優よりも早く撮影場所へ赴き台詞については撮影前に全て覚え込ませ台本は持参せず、更には殺陣も独自で研究し追求してきた。
小林正樹監督の意見の相違があっても、文句は言わず完成までじっと堪え、殺陣で強く当たったエキストラにまで労いの声を掛け常々周囲にも気を遣って来た情に深く熱い男であった三船敏郎。
本作はいろんな意味で完成し尽くされた名作であると思うのでレビュー数が300未満と意外と観られてない方が沢山いらっしゃるのは勿体無い。
これを機に少しでも興味を持っていただき、是非とも大勢の人に観ていただきたいと願うばかりである。
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