Jimmy

波影のJimmyのレビュー・感想・評価

波影(1965年製作の映画)
4.5
2015年3月1日、ラピュタ阿佐ヶ谷で鑑賞。

上映機会の少ない若尾文子主演、豊田四郎監督の傑作🎥

冒頭に「京橋フィルムセンター所蔵作品」とテロップの出る貴重な映画。
未ソフト化。

水上勉原作であり、水上勉映画化作品への若尾文子主演作は、やたらと多い。

また、東京映画作品、東宝配給映画であり、1965年頃の若尾文子の東宝作品は珍しい。

物語は、福井小浜の遊郭に自ら望んで娼妓(要は売春宿の女性)となった雛千代(若尾文子)が戦中~戦後の時代、遊郭の女将の長男(中村賀津雄)が戦地で負傷・除隊となって自暴自棄になっても献身的に支える女性として描かれる。

雛千代は、長男だけでなく(大学を出て教師になりたがっている)長女(大空真弓)にも、周囲の娼妓たちにも優しく接する。

この地方では、葬式のことを「まいまいこんこ」と呼んでいる。

娼妓宿は、戦後の「売春禁止法」で廃業を迫られるが、この時代は、やはり若尾文子も出演していた溝口健二監督作品の『赤線地帯』と同じ頃の風景である。

娼妓宿の女将(乙羽信子)よりも、その宿で働いている女性(浪花千栄子)のエゲツなさが相変わらずで面白かった。

本作タイトルの『波影』の趣きが異なる素晴らしさは、豊田四郎監督のストーリーテリングの見事さによるものであろう。
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