サマセット7

プレステージのサマセット7のレビュー・感想・評価

プレステージ(2006年製作の映画)
3.9
監督・脚本は「インセプション」「インターステラー」のクリストファー・ノーラン。
主演は「X-MEN」シリーズ、「レミゼラブル」のヒュー・ジャックマンと、「ダークナイト」「フォードvsフェラーリ」のクリスチャン・ベイル。
原作はクリストファー・プリースト作の小説「奇術師」。

[あらすじ]
19世紀末ロンドン。
手品師アンジャー(ヒュー・ジャックマン)は、助手であった妻が手品中に事故死したことをきっかけに、事故の原因になった疑いのある同僚の手品師ボーデン(クリスチャン・ベイル)を憎むようになる。
やがて互いに相手より上手のマジックを見せ、相手のマジックを見破って屈辱を与えることに妄執を抱く両者の争いはエスカレートして行き…。

[情報]
独自の作家性と、ヒット作を産む娯楽性を併せ持つ、稀有な監督クリストファー・ノーランの、キャリア初期の作品。

クリストファー・ノーランとその弟ジョナサン・ノーランの共同脚本。
原作小説は、SF文学作家クリストファー・プリーストによる世界幻想文学大賞受賞作。

ストーリーは、マジックに取り憑かれた2人の手品師が、互いに相手を出し抜き、より高度なマジックに挑戦する様を描く。
ノーラン作品らしく時系列がシャッフルされており、ボーデンがアンジャー殺しの容疑で投獄されるところから話が始まる。
観客は、冒頭に至る経緯を追うことになる。

ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、スカーレット・ヨハンソン、デヴィッド・ボウイなどなど、キャストは豪華絢爛。

今作は、批評家からの支持率はそこそこだが、一般層からはかなり熱い支持を受けている。
4千万ドルの製作費をかけたが、1億1千万ドル弱の興収にとどまり、ノーラン作品としては売れなかった方か。

タイトルのプレステージとは、手品用語。
手品の三段階としてプレッジ(確認)、ターン(展開)、プレステージ(偉業)があり、プレステージは仕掛けが発動した後の最終段階を指す。

[見どころ]
妄執に囚われた二人のマジシャンを演じるヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベイルの演技合戦!!!
二人の対決の続きが気になって、引き込まれる!
二人が負う、マジックの代償とは!!?
丁寧な伏線により、オチはわかりやすい。ミステリーというより、どうオチに至るのかを魅せるサスペンスとして楽しむべし!!
どちらかと言えば、中盤の展開の方にびっくり!

[感想]
大変楽しんだ。
こういう、突き抜けた妄執を描く話は好きだ。
宿敵同士の対決ものも好物。
さらにノーラン作品とあって、面白くないはずがない。

両主役とも、なかなかのクズなので共感はしにくいが、何かに狂った人を観察するのも映画の醍醐味の一つ。
そういう意味で今作は、最後まで引き込まれる。

演者対決という意味ではどうか。
ヒュー・ジャックマンも良いが、どこか役者本人のカラッとした根の善性が滲んで見える。
一方のクリスチャン・ベイルは、カメレオン俳優として知られる自身も、ボーデンと大差無さそう。さすが、ネットリした迫力がある。

マジックのネタが満載されているのも、それだけで楽しい。
先入観に付け込み、注意を逸らし、錯覚を引き起こす。
映画そのものが観客の錯覚を引き起こせば、なお良かったかも知れないが。

評価が割れるのは、中盤の展開が好みが分かれるのと、ミステリーとしてオチが読めるあたりか。
あるいは、キャラクターに共感し辛い点か。

[テーマ考]
今作は、芸のために、あるいは宿敵よりも上に行くために、それ以外のあらゆるものを犠牲にする男たちの姿を描いた作品である。
人は、栄光のために、何を犠牲に出来るのか。
今作の全ての描写が、このテーマに寄与するために配置されている。

己の全てを投げ出して、ただひたすら宿業に打ち込む。
なかなか出来ることではないが、真に充実した生とは、そういうものなのかも知れない。
ただし、周りの人は、たまったものではない。

[まとめ]
2人のマジシャンの妄執溢れる対決を描いた、クリストファー・ノーラン監督によるキャリア初期の一作。

ノーラン作品常連のマイケル・ケインがいつもながら渋い。
あと歌手のデヴィッド・ボウイが面白い役で出ていて、サプライズになっている。