けー

シンドバッド黄金の航海のけーのネタバレレビュー・内容・結末

シンドバッド黄金の航海(1973年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「Doctor Who」界隈では伝説的人気を誇る4代目ドクターを演じるトム・ベイカー出演作ということで視聴。

1974年に公開された映画なので、トム・ベイカーが4thドクターとして「Doctor Who」に登場した頃の作品だ。

結論からいえば睡魔との凄まじい戦いとなったとはいえ、冒頭から特撮の取り組みの本気度はめちゃくちゃ感じられる映画だった。

というか、正直結構驚いた。

「ん?この時代ってCGはないよな」となって、小悪魔ちゃんや動き出す木彫り彫刻、六本の腕を駆使して踊ったり殺陣するカーリー像やサイクロプスとケンタウロスのハイブリッド的モンスターとグリフィンのバトルとか動きが滑らかで結構すごくて、いったいどうやって撮影してんねんと。

かろうじて思いつけるのは、粘土人形コマ撮りだけれど、だとしたら手間と時間がとんでもないことにならないかと、なんだか久しぶりに「え?これどうやって撮ってるの?すごい...」となってしまった。

で、これを書くにあたってちょっと調べてみたら、やっぱりこの映画はそこが注目ポイントだったようで、ダイナメーション手法の神レイ・ハリーハウゼンの技が炸裂しまくった作品だったらしい。

この人がすごい人だということは私でもわかる。

だって、本当にすごかったんだもん。
動きがスムーズというだけでなく、ユーモアとか可愛らしさとかもあって、これをコマ撮りでやったと思うとなんだかもうそのこだわりぶりに畏れ多さを感じて拝みたくなってくるぐらいだ。

中でも魔術師クーラが偵察用につくりだした小悪魔ちゃんが最高に健気で可愛らしくて、クーラも目覚めたての小悪魔ちゃんが怖がってプルプル震えてるのを、”チッチッチ”と軽く舌をならして、”大丈夫。怖くない”とどこぞの蟲使いのオネエさんを彷彿とさせる手なづけ方がもうなんだか。
悪の手先なのに可愛いもんだからシンドバッドに見つかって殺されそうになったときなんか、もう全力で頼むから逃げ切ってくれと願ってしまった。

このトム・ベイカー演じる悪役であるクーラはなかなかのお茶目さんで部下のアクメッドに対しても危ないことには巻き込まないようにする気の使いようから、実はいい人なんじゃないかとか思えてくる。

魔術を駆使するとはいえその代償もでかいらしく、どんどん憔悴し、老化してしまうんだけど、そうやって必死の追い求めているのが「若返り」って、そのために力使って年とりまくってたらプラマイゼロなんじゃないかとか。ゼロならいいけど赤字でそうだよとか。

だんだんヨロヨロしてくるものだから岩場のぼるときも普通にコケたりして、なんかどんどん可哀想になってくるっていう。

いよいよシンドバッドを出し抜いて宝探しの最後のパーツを探すってときも、魔術師なのに一つ一つ宝箱あげて中を探ってさがすっていう地道ぶり。
だったらアクメッドに一緒についてきてもらっとけばよかったのにー。
あまりの必死ぶりに、こんなに頑張ってるんだから、宝物あげたっていいじゃんて気持ちにさえなってくる。

というのも当の主人公のシンドバッドは自由を愛する海の男なので美人さんとの恋を得てそれで満足。
地位よりも財宝よりも自由が好きな男。
宰相に頼まれたから今回宝を追ったわけだけど、そのきっかけだってクーラが落っことした財宝へのキーとなる金の装飾品をひろったから...というよりは、その装飾品をクーラの元に届けようと健気に大海を飛んでた可愛い小悪魔ちゃんを射落として手に入れてるわけだから、結局もともとはクーラがめっちゃがんばってたわけじゃん。

クーラの地道な努力の実らなさぶりが気の毒になってくる。だって、別にとくに悪いことしてる感じないんだもん。
黒魔術はつかってますが...。

まぁ、宰相もずっと顔出せないでがんばってたからこちらはこちらで報われてよかったとは思うけれども。
宰相なんてシンドバッドに途中武器扱いされて気の毒だったんだから。「宰相!マスク外して!」って、火傷した顔を晒させて、原住民の人々を怯えさせるってどういう戦法なんだシンドバッド。あんた、意外に手段えらばねぇな。

まぁ、そんな感じで。( は?)
けー

けー