TOMJFK

幸せのちからのTOMJFKのレビュー・感想・評価

幸せのちから(2006年製作の映画)
3.4
社会の問題構造にはメスが入らず

実在するクリス・ガードナー氏の成功物語。 ホームレス時代など、最も苦労した時期を映画化しています。
ラスト10分まで、苦労のストーリー。
成功してからの話しは、字幕で済ませるという手法は、良かったと思います。
しかし、もどかしい場面もたくさんありました。 スケジュール管理やプライオリティ(優先順位)判断の失敗から、労苦を背負う場面も多く、もどかしかった。
貧富の差の激しいアメリカ社会。
そのホームレス経験から、証券会社で成功し、億万長者になる訳ですが、このような貧富の差は、自由経済で、自然発生的に生まれた・・・とでも解釈しているのでしょう?
この辺に疑問を呈するアメリカ映画では無かった、やはり。
本当は、政治・権力者が作り出したものであり、国民・庶民はその犠牲者でもあるわけですが、その辺りの疑問を映画では、全く描かない。
納税シーンも何度か出てくるので、そこに暗に政治批判を表現しているのかも知れませんが・・・。
納税しているのに、国民・貧民に、十分なセーフネットに還元されていない。
それは、ホームレスから億万長者への単なるサクセス・ストーリーなのでは無く、税金を搾取する者(政府・一部の特権者)と正直な納税者・国民との問題構造なのだ。 ホームレス・・・今晩、息子と寝る場所が無い・・・ 公衆トイレで一夜を過ごし、惨めさから涙する、主人公ウィル・スミス。

貧しさ、惨めさは描いても、その理由は描かない。
そこにこの映画の深みの無さもある。
こんな惨めで貧しい生活を強いられているのは、社会構造に問題があり、搾取している者たちがいる。
そこを追求し、改革してゆくことが根本解決でもあろう。
それを放置し、問題構造のままの中で、自分が成功を手にしただけだ、とも言えないか。
まぁ、そんなことは、ともかく、この映画は深みが無くても、ヒューマンドラマとして、愛する息子を幸せにするために力が湧いて、証券会社に選考され、成功を手にするという話しだから、それ以上でもそれ以下でも無い。
ラストで役員たちから、社員採用が決定したことを告げられたとき、目を真っ赤にして、涙も頬を伝わる、主人公の姿には感動した。
ここは非常にシャイな態度であった。
街に出てから一人、喜びを表現していたが、社内で役員たちに、もっと表現していても良かったかも、と思った。
ただ、日常生活で「社会で成功する」とか、成功ビジョンをイメージするには、観ていて良い映画でした。
2009/8/2
TOMJFK

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