さく

残菊物語のさくのレビュー・感想・評価

残菊物語(1939年製作の映画)
2.5
『山椒大夫』と比べると何故か入り込めなかった。「理想論だけで現実を見れない青臭い男」と「超リアリストで真の強い女」の物語という点においてはまるっきり一緒なのだが。

『山椒大夫』では、「悪役」が明確にいたしましてや男は「殿様」なので、まあその青臭さも受け入れられた。イコール女の自己犠牲の精神も(可哀想だけれど)美しく感じられた。なおかつ、最後には母親の犠牲も相まって、感動もひとしお。そして感情を昂らせるのに欠かせない超絶長回しと役者の名演技。

一方、本作はあまりにも男がダメ過ぎて乗り切れない。調子が良くなると調子に乗って、悪くなると全くダメになって「キン肉スグル」を見ているかのよう。こんなのが、「演技上手くてうまいことやりましたー」とかなっても「何でこんな男に才能が?」としか思えなくて、こんなのに恋した女が不憫に思えて仕方がない。

ストーリーだけで映画を評価するつもりは無いけれど、やはり話の本筋に乗れないと、せっかくの良い演技もカメラワークも素直に刺さってこなくなってしまった。
さく

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