津軽系こけし

残菊物語の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

残菊物語(1939年製作の映画)
4.4
この愛が叶うならば


【失われた作品たち】

戦前の日本映画というと、失われたフィルムは数知れず、今なお研究者たちはそれを見つけ出すため奮闘の真っ只中である。その中でこの残菊物語が現存していること、またそれを我々が簡易に視聴できることは、先人の冥利に尽きる。

【長撮りはお家芸】

そんな恩恵に甘んじまくって溝口健二版「残菊物語」の視聴に至った。やはり、ここにも封建社会へのアンチテーゼ的な語りがあり、男女の関係も「山椒大夫」の厨子王と安寿の関係に似ている。
しかしなんといっても長撮り主体の撮影技術が驚異的であり、被写体と日本家屋との奥行き関係が妙。室内そのものではなく、その構造に沿ってゆくような描写が続き、心理状態を「距離」と「影」と「縁」の妙で明かしている。

【まとめ】

少々台詞が聞き取りずらいところもあったが、39年の作品の中でもすごく出来上がった印象である。そして歌舞伎に関する見地も養ってみたいと思った。
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