マグルの血

クロスロードのマグルの血のレビュー・感想・評価

クロスロード(1986年製作の映画)
3.5
ロバート·ジョンソンが遺した幻の30曲目を知るために、若きギタリストが伝説のブルースマンと旅に出る話。

2024年映画初めはまさかの音楽映画。1986年公開のブルースを題材にしたロードムービーです。伝説のギターバトルの噂は耳にしておりましたが未だ鑑賞していなかった本作、満を持して観させて頂きました。

主人公ユジーンは音楽学校に通う若き青年。クラシックギターを専行していますが、ブルースギタリストとして名を挙げたかった彼はひょんなことからロバート·ジョンソンと共演経験のあるハーモニカの名手ウィリーと出会い、彼からロバート·ジョンソンの遺した幻の30曲目を聞き出すべく、ウィリーを病院から抜け出させ彼の故郷へ向かう。

所謂ロードムービーですが、尺の都合かちょっと駆け足気味でグッとこないのが正直な感想。
しかし、ユジーンは精神的に未熟なこと、心の成長が彼をギタリストとして成長させていくというストーリーは音楽ファンとして楽しめました。彼女にフラれたくらいでギターが上達するのか。残念ながら上達するのが音楽の面白いところなのです。

「ブルース」という音楽に明るいわけではないですが、ルーツは深い悲しみや怒りなど、哀愁や枯れた感情がサウンドの核であることは認識しているつもりです。
黒人の歴史的背景とブルースの関係性はとても深く、劇中で言及されていた「白人に奪われる」という表現も、当時の心情を濃く表していると思います。

旅の風景とライ·クーダーの激エモスライドギターがマッチしていてとてもいい。だからこその問題のギターバトル。あれは当時炎上しなかったのでしょうか。

南部伝説のクロスロードから悪魔に連れ出された先にいたのはまさかのジャック·バトラーことスティーブ·ヴァイ大先生。ハードな歪みにアーミングでウィンウィン鳴らすギターをあの土地とあの客層でプレイするって、敵地の真ん中で丸腰の兵隊が敵を挑発してるようなもんですよ。悪魔に魂を売ったわりには全然ブルージーじゃない。悪魔もあの風貌でなぜあのテクニックを授けたのか。

一方スティーブ·ヴァイ大先生の超絶ギターテクに対抗するべくユジーンがとった秘策はまさかのクラシックギターのテクニック。ユジーンギター歪みすぎ。ブルースはどうした。
高速で繰り出されるクラシカルフレーズに対抗するヴァイ先生は全然弾けず、ギターを放り出してどこかへ行ってしまいます。

終盤なんか脚本書くのめんどくさくなったのか、脚本家が変わったのかってぐらい急にぶん投げた内容になり、エンドロールまで非常にもやっとした終わり方をしてしまいますが、それを除けばわりと大味だけど音楽のいいロードムービーという印象。令和現在でもいいヴィンテージ感があって楽しめる作品だと思います。

本当にあの演出、何があったんだろってくらいひどかった。ギターバトルだけ切り取った動画を観たことはあったんですけど、前後関係をきちんと理解して観ると、余計笑えます。

音楽映画はわりと好きなのですが、本作はそこまでハマらなかったな。


2024年 1本目
マグルの血

マグルの血