Asro

人間の條件 第1部純愛篇/第2部激怒篇のAsroのレビュー・感想・評価

4.5
僕たちは現在、歴史に触れ合うことを過度に恐れている。特に日本はそうかもしれない。
にわかには信じがたい歴史を表現として扱う時、その歴史に対して何か別のフィクションを加えて大事なものを変形させてしまっている。そんな気がしてならない。

その意味でこの映画は真っ当に歴史と向き合っていると感じた。
「俺らは何も誤魔化さない、観客の心に響く真実を語ろう」という監督、スタッフ、役者たちの強い信念を感じた。

その信念が伝わったのは歴史を"再現"をする。ということに対して暴力的な執着が見えたからだ。

寒々しい異国感、それを全て日本が吸収してやるというナショナリズム的で横暴な美術、動員された人々の多さ、生死を彷徨うゾンビのような捕虜たち。
これらが本物としてこの映画には映し出されている。
本物として見ろという爆発力がある。もはやホラーかというくらいの恐怖がこの映画には存在した。

人間がもはやどうこうできる問題ではないと思える圧倒的なスケールで現実を稠密に描くからこそ、その最中で描かれる部分的な個と個の交流がより鮮やかに見えた。
過酷な環境を"再現"することから逃げずに捻じ曲げずに表現したからこそそこで巻き起こる人間たちの人間であることの條件がより浮き彫りになって見えたはずだ。

僕は昔の邦画に目を離せなくなる残酷な圧力があることを知った。
ビリビリに体が震えて鑑賞することができた。
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