うみぼうず

時計じかけのオレンジのうみぼうずのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
4.5
カルト的人気!とか書いてある作品を面白いというと映画のこと分かってるんだぜ感が出そうであんまり好きじゃないけど、この作品はめちゃくちゃおもしろかった。
たぶん高校生の時に観たらおもしろさ良さが分からなかったと思う。本作をおもしろいと思うことが良い事かどうかはさておき…。

もうかなり昔の作品だしあらすじにほとんどストーリ書いてあり、プロットは単純ながら心理描写や人間についての洞察、そして本質的な部分が見え隠れしてくる。アレックスの両親が病院で言っていたように「洗脳は酷い、が私達も同じ…」というセリフが的を得ている。
人間は生まれながらにして悪なのではなく環境要因が大きいし、親の立場であれば食い止められることも多かったのではないか。

洗脳から戻り自我(自分の本性)を取り戻すことが果たして善なのか。観ている側に委ねるラストが良い。観返してみると、ナレーションのアレックスはどちらかというと"被害者"で語っていることに気付き、これも監督の仕掛けなんだと思う。

映像×音楽も全てが印象的。あのシンセサイザーの奏でる音楽はしばらく頭から離れなさそうだし、ベートーヴェン 特に第9が喜びや解放 自由の象徴とその真逆として扱われているのが皮肉だなと思う。シニカルで哲学的な内容でありつつ起承転結ありめちゃくちゃ好きな作品となった。ラストシーンは予測不可能だけど衝撃的。
ただ、人を選ぶ作品であるのは間違いないし、人には勧められない作品でもあるな…と。
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