ばっしぃ

時計じかけのオレンジのばっしぃのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
3.4
前半は、美しいクラシック音楽に乗せて、無秩序で無慈悲で狂気じみた性と欺瞞と暴力と暴力と暴力。人間が立ち入りたくない闇一色を提示され不快の極みに心が疼く。近年こんなサイコパスの事件も増えているからとても他人事ではない。こんなモンスターを生み出した根源は両親の無関心が一番の大罪かもしれない。
拘束しまばたきもさせず、ひたすら残忍な映像を見させ続け、暴力に対する生理的な不快感を植え付ける拷問のような実験的治療で、暴力にも抵抗できない身体になったが、それは改心して善人になったわけではない。非人道的な洗脳も不幸だし、暴力は暴力の連鎖しか生まない。人間らしさを取り戻させると再び狂気も取り戻す。それが人間の本質なのか?
視覚的にも聴覚的にも不安を掻き立てる仕掛けがたくさん施されている。不思議な言葉を繰り出すのもとても現代的なのかもしれない。キューブリックのマジックに翻弄されるが、やはり悪趣味な不快感が勝る。
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