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時計じかけのオレンジのますのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
3.8
映画を見ていると作り手の人間に対する感情や考え方が見えてくることがあると思うのだが、キューブリック作品はどれも監督が一歩引いた地点から実験動物を見るように人間を見ている感覚があり、「なんだか冷ややかな感じがするな…なんでだ…」と不思議に思っていた。

しかしこれを見てようやく、キューブリックは映画を通して「人間(や人間が作り出したシステム)を警戒せよ」と言いたいのだなとわかった。
彼は人間の善性を信じてはいるものの、それは「善を選択し続ける」ことでしか成立しないと考えている+そうすることの困難さを理解している。そして悪性や無記性は善性を簡単に打ち破って牙を向いてくるとも考えている(多分)。善:無:悪の割合が2:4:4くらいだと思ってる(多分)。

だからか、悪性を描くのがとてもうまい。
本作の暴力シーンは特別に誇張されているわけではないが、されていないため余計に胸糞悪い。わりと残酷描写や胸糞描写には慣れている方だと思っていたものの、この生々しい"ありふれた暴力シーン"はこたえた。トンチキなBGMやサイケな絵作りで(お母さんのファッションどうなってんの?)緩和されてはいるものの、IKEAのサメぬいがなかったらメンタルがやられていた気がする。

しかし見てよかった。「善」を盲目的に信じたり、信じようと促すことの危険性を改めて実感できた気がする。
雨に唄えばを歌いながら暴力を振るう人間の内面はまるで理解できないが、しかしそういった人間は存在するんだよな…。
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