とり

時計じかけのオレンジのとりのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
5.0
10代の頃に初めて観て、えらく衝撃を受けた作品。
当時はいやらしげなボカシモザイクが画面を縦横無尽に飛び交ってました。今思えば深夜帯とはいえ地上波で放送してたことにもびっくりですね。

初見ではアレックスが自殺に追いやられる場面が印象的で、かなり可哀そうなどと感じたものです。おそらくドンピシャな年齢で観たゆえだと思う。
表のテーマは暴力と性ですが、裏には原作当時に大きな脅威であった共産主義、それが屋台骨として通っています。ロシア語由来と思われるナッドサット語、灰色で無機質な団地群、全体主義や管理社会が舞台となっています。老人がみな一様にどこかおかしい。

もう何十回何百回繰り返し観たことか。観るたびに新しい発見があります。飽きない。
オープニングのアレックスドアップからエンディングの「完璧に治ったね I'm completely cured」まで、完璧としか言いようがない映画。どこにも無駄がないカッチリとした美しさ。
スタンリー・キューブリックの死があらためて惜しまれます。

どこを取っても無駄のないこの作品の中であえて好きな場面を挙げるなら

・冒頭の酔っ払い
・雨に唄えばのアルトラ
・レコード店の内装、音楽、衣装
・キリスト人形や妄想のキリスト
・デュランゴ95の合成感
・アレックスんちでドルーグ待ち伏せ、及びそのやり取り(影の使い方が素晴らしい!)
・運河でのトルチョック制裁、泥棒かささぎ
・運河制裁と対になってる出所後の水中拷問、逆光が神がかり
・作家のやりすぎ演技の数々
・看守の全て
・スタージャでの内務大臣見回り、威風堂々
・出所後の自宅会話、居候男
・病院で内務大臣との会話、女医カウンセリング

他にもあそこもここも、全てが良い。光と影。物の配置。張り詰めきった空気。長回しで生じる緊張感。
観たことない人は死ぬまでに一度は観て欲しいですね。
他人に強く勧める映画じゃないかもしれないけど。

原作も何度も読み、サントラもヘビロテ。
私にとっての究極と至高の映画です。
点数なんてとてもじゃないけどつけられない。
とり

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