作品いっぱいに満ちた皮肉と暴力をなぜか不快感なく受け入れることができつつ、一方で不条理に身を任せて世を捨てるような衝動に見舞われることもなく、ゆりかごに揺られるような、子供として大人に手を引かれて歩くような無力感と心地よさを味わう鑑賞体験をしました。
書類にサインをし続けるだけの単調な場面の長回しがとても印象的でした。
音楽だけを聴いていたくなったり、差し込まれる心象風景に納得したり、50年前の映画とは信じられないほどの鮮やかさを覚えました。
そして、私はどう生きて振る舞っているのか、私は社会とどう結びついているのか、問い直されているようで、身を正す思いがしました。