クマヒロ

時計じかけのオレンジのクマヒロのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
5.0
超強烈な社会風刺。
刺激が半端じゃなく、中毒性がある。

まず、なんといってもキューブリックの芸術の世界に引き込まれる。
構成がかなり的確に計算されていて、かつ、セットや音楽の配置もセンスが良すぎて、延々とアートを見せられているようだった。

前半の暴力とSEXの描写の過激さ。
超カッコいい衣装と、想像の範疇を超えたセットの芸術性、台詞のカッコよさ等によってそれらの過激さも全て肯定されていくよう。自由奔放に振る舞う彼は美しい。

うってかわって後半の陰鬱な感じは、法社会、全体主義的な社会を否定するかの如く、退屈で暗く、衣装もセットも地味。
暴力を否定されたはずなのに暴力によって押さえつけられ、さらに政府によって自由が抑制される。しかも本人の自由意志ではなく、したいことを全て封じ込められていく。
どの国にもどの人にも当てはまるような、現代社会の性質を風刺しているのではないだろうか。

笑えるくらい大胆な音楽の使い方は2001年宇宙の旅から通ずるものであり、音楽による肯定と高揚がスクリーンからバッチリと伝わってきた。
暴力とSEXをここまで肯定した作品はないのではないか。

この映画がなくては生まれてない映画も多数あることと思う。
真利子哲也監督作品、マーティンスコセッシ監督作品、最近で言うとJOKERに近いものを節々から感じ取った。
自分の大好きな作品達がここから生まれているかもと思うと自然とワクワクしてくる。

不快で爽快で気持ち悪くて気持ちいい。
最高の刺激的な時間だった。
クマヒロ

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