しんご

マイ・フェア・レディのしんごのレビュー・感想・評価

マイ・フェア・レディ(1964年製作の映画)
4.2
ミュージカル映画の傑作として名高いが、個人的には「言葉と品格」「男女の差」「人と接する態度」に切り込んだ点にかなり感銘を受けた。唯一の難点は上映時間が約3時間と長すぎること笑。

綺麗で正しい言葉を話すと内面が言葉と同じ様に綺麗に正しくなろうとするんだなと感じる。「Rain」を「ラァイン」、「Wait」を「ワァイト」と発音するイライザはオードリー・ペプバーンであることを一瞬忘れる程本当に下品で卑しい娘に見えたけど、そんな彼女が後半の舞踏会シーンでは別人に見えるから凄い。初めて「スペインの雨は主に平野に降る」とイライザが言えたシーンではなぜか少し目が潤んだ。彼女が自分の努力で違う人生を歩み始めたシーンだったからかな。

そんなイライザを最初は実験材料として上から目線で接していた男性至上主義でモラハラな言語学者ヒギンズも彼女に「改造」されていくのが面白い。

「女を追い出してスペイン語の本を読もう」と高らかに歌っていた男がイライザの挙動にやきもきして品位もかなぐり捨ててだだっ子の様になる。それを踏まえて「よくこの人から品位が学べたわね」と切り捨てるヒギンズのお母さんのセリフはかなり皮肉で痛快。

とはいえ、ヒギンズのこの頑固さは嫌いになれないものがあった。イライザの「(大佐は)花売り娘を貴婦人として扱ってくれる」との言葉に、「私は貴婦人を花売り娘として扱う。つまりどんな身分でも同じ態度で接するということだ」と返すヒギンズのシーンは個人的にかなり考えさせられた。頑固な屁理屈と一蹴すればそれまでだが、これが彼のキャラの魅力だしそこにイライザが惹かれたのも事実なんだよね。

そんな経緯を踏まえてイライザが最終的に誰を選んだかについて、あのラストは個人的に好きだし男女の感情の複雑さをよく表しているなと思う。

余談だが、「キングスマン」でハリーがエグジーにマナーの大切さを教えるために「プリティ・ウーマン」や「大逆転」を観たことあるか聞くシーンがある。その中で一番可能性が無さそうな「マイ・フェア・レディ」だけエグジーが観てたのには笑えた。
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