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地獄へつゞく部屋のくりふのレビュー・感想・評価

地獄へつゞく部屋(1959年製作の映画)
3.0
【サイコの薪】

アマプラ見放題で推されたウィリアム・キャッスル物件。ナゼこれを?体験としてはオモロかったけどね。

1959年当時の4DX映画wwwなので、体験できたのはその一部。体感ができないんですよね。映画館でギミックを使い、実際のお化け屋敷を演出していたから。

本作での仕掛けは、画面のアレなショックシーンに合わせ、客席の上からもアレを飛ばしたそうだ。場内バカウケだったとか。恐怖…でなく、笑いで!興行的にも大成功したそうな。

が、この監督、映画作りはヘタだよね。それを自覚したからこそ、ギミックに走った気がする。実際、ギミック映画が衰退すると彼の映画もウケなくなり、監督業から離れていく。

アイデアマンではあるのでしょう。本作も、設定は面白いもの。幽霊屋敷で一晩、生き抜いたら1万ドルプレゼント、というパーティーに集まった5人と、彼らを集めた百万長者の夫婦。てっきり、びっくりゴーストストーリーになるかと思いきや…。

ホラーのふりして、フーダニットに持ってゆく。さらに実は!…とやりたかったらしいが、ヘタなのでミスディレクションが効かず、エブリワンダニットに見えてしまう…。これはこれでミステリアス!www でも、誰がやろうがどーでもよくなっちゃうんだけどね。

事件を解決しようとせず、みな各々、部屋から出ないでおこう…とするヒッキー展開はむしろ、現代的で新鮮。一方、逆に、何でも解決しちゃうwwwいちにぃ酸フロア!はまさに地獄の釜で、ペラッペラで底抜けな本作の中、ここだけは底なしで強烈な妄想喚起力!

ヴィンセント・プライスは、ふつーに撮ればふつーに好演している筈なのに、ココではそれが微怪演に見えてしまうという、これぞ怪演出。でも監督は、ふつーに撮ってると思う。

退屈を耐えた観客ムケに突如、美脚妻ネグリジェサービスを挿入するのは狙いでしょうが。

そして最後のタネ明かしでは、プライスがキャッスル本人に被って見えてくる。ココが本作のキモで、ウィリアム・キャッスルが無意識に?自画像を描いちゃったってコトではと。

配信では本来の楽しみ方はできないものの、個人映画としての面白さは見いだせますね。

ヒッチコックが本作に刺激され、翌年『サイコ』を撮ったという話は“メイキング・オブ・サイコ”で読んだような気がするが、これならオレの方が巧く撮れると思ったろうし、躍進するTVへの対抗馬としてはショッカーだ!と考えても、おかしくなかったでしょうね。

ちなみに、本作に続く『ティングラー』は先に見ていましたが、そちらでは映画本編と、座席の背もたれとの連動びっくりを仕掛けてバカウケだったらしい。4DXより楽しそうだな。

『ティングラー/背すじに潜む恐怖』
https://filmarks.com/movies/44220

<2023.10.17記>
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