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シン・レッド・ラインのYYamadaのレビュー・感想・評価

シン・レッド・ライン(1998年製作の映画)
3.0
【戦争映画のススメ】
シン・レッド・ライン (1998)
◆本作で描かれる戦地
1942年 太平洋戦争最大級の激戦
「ガダルカナル島の戦い」/ソロモン諸島
(実話に基づくフィクション)
◆本作のポジショニング
 人間ドラマ □■□□□ アクション

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・太平洋戦争中の1942年、アメリカ陸軍の部隊がガナルカナル島へ上陸。兵士たちは日本軍と激しい戦闘を続ける一方、複雑な思いを抱えていた。
・手柄を焦る司令官トール中佐、彼に反発するスタロス大尉、志願して斥候隊に加わるウィット二等兵、勇敢なウェルシュ軍曹、戦地で知った妻の心変わりに困惑するベル二等兵。そんな彼らは大自然の中で繰り広げられる戦闘の果てに何を見たのか?
 
〈見処〉
①パラダイスは、
 若者たちの魂の中にある——
・『シン・レッド・ライン』は、1998年に製作された戦争映画。タイトルは「細い赤い線」=「越えてはならない一線」を差し、1962年に出版された同名小説を原作としている。
・太平洋戦争の激戦地となったソロモン諸島最大の島、ガダルカナル島の戦いを舞台に生死の狭間を生き抜く若き兵士たちの姿を、20年ぶりに監督復帰したテレンス・マリックが描いている。
・主演は『パッション』でイエス・キリストを演じたジム・カヴィーゼル。共演は、ショーン・ペン、エイドリアン・ブロディ、ジョン・キューザック、ウディ・ハレルソン、 ニック・ノルティ、ジョン・トラボルタ、 ジョージ・クルーニー、 ジャレッド・レト、 ジョン・C・ライリー、ニック・スタールら、多数のハリウッドスターが豪華に脇を構えている。
・批評家からの評価が高い本作は、第49回ベルリン国際映画祭では、最優秀賞にあたる「金熊賞」を受賞。第71回アカデミー賞では、作品賞/監督賞/脚色賞/撮影賞/音楽賞/音響賞/編集賞の7部門にノミネートされたが、『恋におちたシェイクスピア』『プライベートライアン』『ライフ・イズ・ビューティフル』に憚れ、無冠に終わった。

②ガダルカナル島の戦い
・「ガダルカナルは、たんなる島の名でない。それは帝国陸軍の墓地の名である」——本作で描かれる「ガダルカナル島の戦い」は、第二次世界大戦下において、1942年8月7日 から1943年2月7日に日本軍と連合軍が西太平洋ソロモン諸島のガダルカナル島を巡って繰り広げた戦いである。
・日本側は激しい消耗戦により、戦死だけでなく餓死により19,200人が死亡。また、多くの軍艦、航空機を失い、ミッドウェー海戦と共に太平洋戦争における攻守の転換点となった。

③テレンス詣で
・本作でメガホンを取ったテレンス・マリックは、のちにタランティーノやフィンチャーに影響を与えた『地獄の逃避行』(1973)や、カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した 『天国の日々』(1978)を手掛けた、70年代の若手スター監督。
・「映像詩人」と称されたテレンス・マリックが本作により、20年ぶりに監督にカムバックすることが報じられると「私はずっとマリック監督の復活を待っていた」とスピルバーグに言わしめさせ、ハリウッド俳優たちはこぞって出演を熱望。
・本作出演者以外では、ブラッド・ピット、アル・パチーノ、ブルース・ウィリス、マシュー・マコノヒー、レオナルド・ディカプリオ、ケビン・コスナー、イーサン・ホーク、ウィリアム・ボールドウィン、ジョシュ・ハートネット、ジョニー・デップらから逆オファーを受け、キャスティング・ディレクターは、これ以上のリクエストを受け付けないと発表しなければならないほどの事態となる。
・さらに製作側は、ロバート・デ・ニーロ、トム・クルーズ、ハリソン・フォード、ニコラス・ケイジらにも声をかけ、さらにマリックは、本作のテーマ曲をマイケル・ジャクソンに依頼する始末。
・撮影に参加した俳優ではジョン・トラボルタやジョージ・クルーニーはノー・ギャラでの出演が噂され、クルーニー出演シーンは危うくカットされかかったが、既に予告編に登場していたことから、わずか数秒の出演シーンが残った。
・また、原作小説の主人公役を演じたエイドリアン・ブロディは自身が主役のつもりで撮影に参加していたが、出演シーンの大部分がカット。端役となっていることをプレミア上映で知り、愕然としたそうだ。
・さらに、アントニオ・バンデラス、ゲイリー・オールドマン、ミッキー・ローク、マーティン・シーン、ヴィゴ・モーテンセン、ビル・プルマン、ルーカス・ハースに至っては出演シーンを全カット。ビリー・ボブ・ソーントンも務めたナレーションを全てカットされている。

④結び…本作の見処は?
「オールスター出演作品」、戦争映画版「ウィ・アー・ザ・ワールド」の作品内容は!?
◎: 青い空、深い密林の緑、熱帯の小動物、戦地となる高地の深い薮…。ガダルカナル島の描写がとにかく鮮明で美しい。太平洋戦争の激戦をセピア色の記憶にしてはいけないとする意図であるならば、その演出は正しい。
○: 武道派ながら戦地を理解しないノンキャリア上官と、インテリながら戦地の困窮を把握する上官の対立や、戦地に届いた手紙にて妻から離婚を切り出される兵士など、日本軍との攻防以外の人間模様には、それなりの見どころは多い。
✕: 戦闘シーンは中盤で終わり、戦争の悲惨さを表現するシーンは少ない。本作で伝えたいメッセージはなきまま、哲学的なナレーションで誤魔化している感が甚だしい。
✕: 3時間近くかけながら、多数のキャストを生かしきれていない。長尺の上映時間+睡眠導入剤入りの演出にて、生活リズムの昼夜逆転を招くリスクのある作品。
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