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シン・レッド・ラインのBOBのレビュー・感想・評価

シン・レッド・ライン(1998年製作の映画)
4.0
テレンス・マリック監督にとって、『天国の日々』以来20年ぶりの復帰作となった、太平洋戦争ガダルカナル島の戦い(1942)を描いた戦争ドラマ。

「お前か俺の親友殺したの。俺はお前を殺したくない。降伏しろ。」

3時間弱という長尺が気になり、後回しにしていた作品。

テレンス・マリック監督らしい圧巻の戦争映画。なぜ我々は戦うのかという若い米国兵たちの葛藤に肉薄した濃厚な人間ドラマ、息を呑むほどに美しいビジュアル、生と死をテーマにした詩的でスピリチュアルな問いかけ。見応えしかなかった。

はっきりとした主人公が存在しない戦争群像劇。戦争という現象を神の視点から描いているような印象を受けた。豪華俳優陣が次々に出てくるのも特徴で、"一人死ねばまた次の一人がやってくる"という戦争の構造を体現しているかのようだった。

『プライベート・ライアン』級に、映画を通して戦場の壮絶さを体感する戦争映画。戦闘シーン、爆撃シーンの臨場感が半端ない。一寸先は死である戦場のど真ん中に放り込まれる。特に、日本軍のトーチカを占領するまでの高地戦シークエンスは凄まじい。

テレンス・マリック監督らしさ。
・ボイスオーバーによる心情吐露。スピリチュアル、詩的。
・度々挿入される動植物のイメージ画。生と死の対比。神の視点。この物語の主役は人間だが、人間なんて地球の一部に過ぎない。人間はなぜこうも愚かなのかと、動物たちの目が訴えかけているような気もした。

米兵🇺🇸描写。印象的だったのは、誰一人として"格好良く"描かれていないこと。正気を失い、ミスをし、弱音を吐き、怯え、震え、怯み、憂い、泣き喚く。ありがちな"戦争の英雄"の姿とはかけ離れた、死物狂いで生きる人間のリアルがそこにあった。

日本兵🇯🇵描写。中盤までは単なる顔の見えない殺すべき敵だったが、物理的距離が縮まると、一人一人が感情を持った人間として丁寧に演出されるようになった。米兵視点のショットと日本兵視点のショットが混在する戦闘シーンまであったのは驚きだった。これこそ"正しい"敵兵の描き方なのではないかと思わされた。

米兵たちの疑念と葛藤。
人を殺すということ。集団自殺も同然の上司命令を受け入れられるか (気心の知れた部下たちに対して死んでこいとの命令を下せるか)。名誉殊勲賞になんの価値があるのか。死人は肉の塊か。戦場で死ぬか、生きて帰るか。戦場に善悪の区別はあるのか。兵器としての兵隊、人間としての兵隊。生きる歓び、死ぬ恐怖。

オリジナル脚本は、『地上より永遠に』や『史上最大の作戦』なども手掛けた米国人小説家ジェームズ・ジョーンズ。

📝ガダルカナル作戦(1942.8.7〜1943.2.9)
日本軍が敗戦に向かう転換点と位置づけられているガダルカナル島奪還作戦。太平洋戦争開戦以来、攻勢を続けていた日本陸軍にとって、米軍との初めての本格的な地上戦となった。半年間で約22000人の戦死者、餓死者を出し、日本軍の大敗北に終わった。

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