ちろる

日本春歌考のちろるのレビュー・感想・評価

日本春歌考(1967年製作の映画)
3.5
60年安保の時代、世の勢力的な若者たちがベトナム戦争反対を叫ぶ中、それらの運動にも目もくれず、ただ、ありあまる精力を持て余して妄想の中で女をレイプする想像をするだけの無気力な若者たち。
受験を終え、目も眩むほどの美しさを放『469番』の事ばかり頭から離れない4人。
死ぬ直前に高校教師大竹が歌う「春歌」が印象的に投入される。
実は大島渚監督初心者なので、正直なかなか飲み込みづらい内容ではあった。

大竹の春歌は抑圧された日本民族の叫び。
象徴的に掲げられるコカコーラの看板の下で在日少女が歌う哀しき満鉄の労働者の唄。
若者たちのフォークソングへの嫌悪。
そして裏の日本を表す黒丸の国旗。

四人の若者に蔓延る嫌悪感は、監督の嫌悪感を表現してるのだとしたら監督の思想がよく分かってないので、上手いこと書けないのだが、大島渚は日本が嫌いで、
日本のエリート主義者、ブルジョワなどが高みの舞台から分かったような顔して平和を歌う人間たちを嫌悪してるのだろう。
(と言いつつ大島監督もも最後にはブルジョワ層なのは皮肉)

音楽も含め前衛的描写も多く、女性としてはなかなか嫌悪感拭えぬシーンも多いがこれも一種のミュージカル。
この時代の空気感や風俗文化を体感することが出来ただけでも観る価値は合った作品でした。
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