ゑぎ

マリアカンデラリアのゑぎのレビュー・感想・評価

マリアカンデラリア(1943年製作の映画)
4.0
 第1回カンヌ映画祭グランプリ作だ。と云っても、その年、カンヌのグランプリは11本選ばれており、有名なところだと『無防備都市』や『逢びき』、『失われた週末』なんかも含まれる。

 本邦ではほゞ認知されていないと思われるのだが。本作もエミリオ・フェルナンデス+ガブリエル・フィゲロアの代表作と云っていいのだろう。正直に云うと、今回、YouTubeのスペイン語版で字幕の自動生成機能を使って見たのだが、日本語に自動翻訳すると、まるで意味が通らないので、英語に自動翻訳して見た(まあ、どっちもどっちということですが...)。

 さて、本作は、メキシコシティに近いソチミルコ(Xochimilco)という地域を舞台とする。ソチミルコは今日でも有名な観光地のようで、Webで検索すると、観光地としての情報は沢山集まる。この映画では、ポプラを細くしたような木が沢山ある、周囲とは隔絶した湿地帯で、ちょっと他では見たことがないような、奇妙な風景なのだ。これが、本作の恐るべきストロングポイントというか、スペクタクルを形成する。タイトルロールのドロレス・デル・リオは、娼婦の娘で、他の村人から迫害を受けており、この湿地帯に一人幽閉されているような境遇だ。彼女が小舟に花をいっぱい載せて水路を行く場面の美しさ。調べると、40歳ぐらいのデル・リオだが、20歳の頃(例えば『栄光』の頃)以上の神々しい美しさがある。そして、一人彼女の味方になっているのが、ペドロ・アルメンダリスで、二人は愛し合っており、幸せな結婚を夢見ているのだが、村の雑貨屋で顔役のミゲル・インクランが二人の邪魔をする。果たして二人は結ばれることができるのか、というお話だ。

 上にも書いた、デル・リオの美しさ、舞台(ロケ地)の持つ画としての強さでスペクタキュラーな画面を供給し続けるのだが、例えば、終盤の松明を持った人々を撮った、もの凄いモブシーンなど、演出と撮影の創意も大したものだと思う。投獄されたアルメンダリスが、馬鹿力で牢屋のドアを外して出てくるというような、唖然としてしまう演出もあるが、全体に瞠目すべき出来栄え。傑作だ。
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