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彼とわたしの漂流日記のkuuのレビュー・感想・評価

彼とわたしの漂流日記(2009年製作の映画)
3.8
『彼とわたしの漂流日記』
原題 Castaway on the Moon.
製作年 2009年。上映時間 116分。
『ヨコヅナ・マドンナ』で脚光を浴びたイ・ヘジュン監督による奇想天外な韓国産ラブストーリー。
主演はチョン・ジェヨン、チョン・リョウォン。

人生に絶望した男がソウルを流れる川・漢江に飛び込む。
目覚めると孤島に漂着していた男は、島を脱出することを諦め、そこでサバイバル生活を始めることに。
一方、川岸に建つマンションの一室に3年もひきこもる孤独な女は、カメラの望遠レンズ越しに孤島の男を発見し、何とか男へメッセージを送ろうとする。

真夏にコメディをと観始めたら、オモロイやないかぁ。
主人公のキムさん嗤わしよる。
独善的な演技がみょ~にササクレだった心には優しく映った。
缶詰めや棒きれで作った案山子を相棒にして語り合うところなんか、話してる兼ね合いで感じる微笑ましささえ窺えた。
ジャージャー麺にこだわったキムさんは、山鳥のフンに絶叫興奮しよる。
フリフリ、プリプリ、フリチンになってあそこまでやりきれる演技にアソコだけに脱帽。
大笑いしたってよりも、イヤらしいニヤニヤ笑いが出来たかな。
ホンでもって、この映画にはもう一人、引きこもり女子が出てくる。
彼女はごく普通の容姿風やけど、オイラの美女レーダーは動き捲ってたけど、流石女優。
引きこもり役にハマっとるし、美女を隠しきれてた。
あくまでもオイラの美女レーダーは動いてたし、美女やと仮定してやけど。
薬こそ飲んでるシーンなかったが、目がトロンとした鬱な感じ、指の震え、弱ちぃ四肢に、付属する歩きかた等々エトセトラ。
マジなんかなぁって思うくらいリアルやった。 
個人的掘り出しモンの棚に納めときたい位の作品やった。
都会のど真ん中に無人島って荒唐無稽な話やけど、コメディのアイデアならアリやし、成功してると思う。
『都会に砂漠』
『都会に雪山』じゃなく、
『都会の無人島』て所はウマイ、石塚ならマイウー。
齷齪する人の波に囲まれながら、孤独て大きな問題を抱える現代人の後ろメタファー映画なんやろな。
賑やかではんなりした都会の無人島から出れないキムさん。
小生は都会で自身を壊したし死を見たし妙に共感した。
キムさんは自殺志願者やのに無人島でサバイバルする内に、生きるって事に対する執着(ジャージャー麺への執着偏愛かもしれへんが)が強くなってくる。
自殺志願てのは、生きたいって本能が色んな要因で希薄になるからやと云う人もいる。
自分も含めて、発展国の人たちは、モノが溢れて、少々の事じゃ欣喜雀躍することなんてなくなって、衣食住足りても礼節すら忘れ、あらゆるモン欲して、結局、着地点すら見失う。
精神の安寧を追い求めた代償は獣的な本能が失われてしまっとる。
キムさんが呼び覚ましてくれた感じやわ。
片や、ひきこもり女子は、無人島よか快適な環境は約束されてる(ごみ溜めみたいやけど風雨はしのげるし)生活をおくっとる。
手に入れたいモンはネットでポチポチしたら手に入るけど、自殺志願者予備軍。
相反する二人の生を見てると、
『断捨離』って言葉が過る。
人てのは大事にしてるモノ(無くしても直接的に死なない)を失ったほうが意外にストレス軽減で生命力が増え、長生きでけんのかなぁと。
もし自らを死に至らしめるこを望むなら、その前に強い断捨離を決行してみんのもワルくないかもしれへん。
映画の終盤、都会にある無人島に流れ着いたキムさんと、引きこもり歴三年位の女子が、各々が迷い込んだ『無人島』から抜け出し、幻影にも似た月の世界で出会うなんて粋やねぇ。
コメディの真骨頂!!
示唆に満ちた映画にササクレだった心が癒された。
これぞ映画の力。
まぁ、人それぞれ環境はちゃうし、感じかたはちゃうやろけど、ササクレだったときに是非とも観て欲しい一本かな。
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