不在

殺しが静かにやって来るの不在のレビュー・感想・評価

殺しが静かにやって来る(1968年製作の映画)
4.4
違法な賞金稼ぎたちが跋扈する町に、一人の殺し屋が降り立つ。
その男は凄腕のガンマンであり、彼が通り過ぎた後には静寂しか残らないことからサイレンスと呼ばれ、その名を轟かせていた。
しかし復讐の産声が上がるのは常に静寂の中からであることを、この時のサイレンスは知る由もなかった。

静寂というものが平和のために役立つのだろうか。
彼のもたらす静寂はほんの一瞬のものでしかなく、それを切り裂いて新たな喧騒が生まれていく。
サイレンスはそういった声を、すべて力でねじ伏せてきたのだろう。
殺しによる沈黙、復讐という名の狂騒。
彼らはこれの繰り返しだ。
我々人類に必要なものは静寂と喧騒の狭間、つまり対話なのだ。
しかしサイレンスは幼い頃に喉を切られ、声を出すことができない。
話すことができなければ、人との平和的解決を叶えることなど到底できやしない。
彼は初めからこの世界に必要なものではなかったのだ。

サイレンスは自分の力に溺れ、殺しでしか人との接点を持とうとしなかった。
彼にとって殺しだけが、他者との対話だった。
そんな悲しいほど寡黙な男が、この先の世界を生きていくことなど許されない。
彼は時代によって殺されたのだった。
不在

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