シンタロー

呪いの家のシンタローのレビュー・感想・評価

呪いの家(1944年製作の映画)
3.6
音楽家のリック・フィッツジェラルドと妹パメラは、ロンドンの都会暮らしに疲れ、イングランド郊外で休暇を過ごしていた。海沿いの断崖絶壁に建つ屋敷を気に入り、家主のビーチ中佐を訪ねる。過去に幽霊騒動で借主が出ていった話を聞かされるが、破格の値段で購入できることになり、2人は購入を決心。その家に亡き母親との思い出がある家主の孫ステラは未練がある様子。ロンドンで仕事を終え、家政婦のリジーを連れてきたリック。パメラは荷解きと片付けを済ませて待っていた。その晩、不気味な泣き声が家中に響き渡り…。
屋敷がメインのゴシックホラーの原点のような作品。後の「たたり」「家」「ヘルハウス」等々に引き継がれたと思われます。時代的なこともあってか、直接的な恐怖描写はほとんどありません。霧?靄?を使ったような描写ですら、当時の検閲で問題視されたそうですから、難しかったのでしょう。それでもモノクロの陰影を活かした幻想的撮影は出色。幽霊の正体は何なのか、なぜ現れるのか、という謎解きミステリー、リックとステラのラブストーリーに、コミカルな要素まで加わってるので、怖いホラー映画を期待すると拍子抜けするのかも。マーティン・スコセッシは最も怖い映画の3位に選出しているそうですがね。リックがステラのために作曲する"Stella by starlight"は、本作のためにヴィクター・ヤングが作曲したジャズナンバーで、後にフランク・シナトラらがカバーする名曲です。
主演はウェールズ出身の名優レイ・ミランド。ジェームズ・スチュワートのバッタもんなんていう失礼な声もあるそうですが似てます?ヒッチコックが好きな系統のお顔立ちなだけで、私的にはこちらの方が男前だと思います。タイロン・パワー、ケイリー・グラントらと共に大根役者の代表にもあげられがちですが、芝居も悪くないと思います。二枚目ながらクセの強い役を好む傾向で、どこか愁いと妖しさを含んだ佇まいは魅力的。後の監督作は突飛な感じです。ステラ役のゲイル・ラッセルは、本作の好演を機に出世しそうなところで、ジョン・ウェインとの不倫やアル中に苛まれ36歳で早逝。残念ですが、名曲のタイトルヒロインを演じた記憶に残る女優さんです。
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