夏藤涼太

機動戦士ガンダム III めぐりあい宇宙編の夏藤涼太のレビュー・感想・評価

4.3
1作目はただの総集編、2作目は作画と演出は良いがストーリーはダイジェスト、という評価をしたが、3作目……これは名作である。

いや本作も前半部に関しては、2作目同様にダイジェスト感や、場面転換の多さが気になるものの、ソロモン攻防戦以降は元々一気に話が進んでいく構成上、総集編感を感じさせない作りになっている。

そして何より、ほとんど新規で描き下ろされた、安彦良和と板野一郎の人物作画とメカ&アクション作画の気合の入りっぷりには平伏するしかない。
単に絵が綺麗というだけでなく、演出面が大幅に強化されているので、同じストーリーなのにものすごくドラマチックになっていたりする。

また作画や演出以外にも、ニュータイプ論や政略面について、シナリオ的な補強・補足が追加されているので、ガンダムという物語を理解、いや、より楽しめるようになっている。
ラストは泣けるわ……

あと、ラストが打ち切りではなく、Zガンダムに繋がるオチになってるのも嬉しいところ。

「戦争アニメ」としてのガンダムの「上手さ」に関しては、詳しくは第一部の感想に書いたが、ガンダムで凄いのは、単純な戦争文学や戦争映画で描かれてきた戦争ドラマを単純にジュブナイル向けアニメーションに書き起こしただけでなく、「ニュータイプ」というSF的概念を導入したことで、新たな手法で人類と戦争の関わりを描いたことである。
ニュータイプ論と戦争論についての詳しい考察は、『逆襲のシャア』の感想を参照してほしいが……
劇場版の締めくくりで表示される、「And now in anticipation of your insight into the future.」という英文は、なんとも示唆に満ちている。

ニュータイプでさえ止められなかった戦争だが、本作を見た、深い洞察力(ニュータイプ的感性)を持った未来の世代なら、きっと、争わずにゆけるだろう、という……皮肉を感じると同時に、希望に満ちたメッセージである。
夏藤涼太

夏藤涼太