ウシュアイア

これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫のウシュアイアのレビュー・感想・評価

3.0
[あらすじ]
少女マンガの編集者にあこがれて小学館に入社した武田初美は入社式にゲストとして、イヤミのコスプレをした赤塚不二夫に「バカになれ」と「シェー」のポーズを強要され、頭にきた初美は赤塚を殴ってしまう。

少女漫画誌部門へ内定していた初美であったが、突如、少年サンデーの赤塚担当になってしまう。歓迎会に連れていかれた初美は、それまで飲んだことのなかったお酒を口にし・・・



赤塚不二夫担当のマンガ編集者の回顧禄を脚色した作品。

実在の編集者は男性であるが、主人公は女性で堀北真希が熱演している。なぜ、主人公を女性にする必要があったのかは謎であるが、サンデーで「おそ松くん」を連載する一方で、マガジンでの「バカボン」の連載開始を見抜けなかった初美を叱責する編集長の言葉に、「漫画家と編集者の関係は、女房以上」とあるが、そんな部分を強調するために主人公をあえて女性にしたんだろうか。

時代は1960年代から1970年代ということで、昭和の臭いがぷんぷんする時代。

職場での喫煙は当たり前で、仕事場は煙だらけだし、読者アンケート結果が黒板にマグネットで貼りつけられる、という細部にまで昭和を感じさせる演出がなされている。そして、『白夜行』同様、主演の堀北真希は昭和がよく似合う。

少年サンデー編集長役の佐藤浩市は、この手の役どころは手慣れたものであり、無難なキャスティングと言える。そして、赤塚不二夫役の浅野忠信はうまい。『酔いがさめたらうちへ帰ろう』で西原理恵子の夫・鴨志田穣や、『ヴィヨンの妻』で大谷といったアル中になったアーティストを演じてきており、無難だけど焼き直し感のある演技かと思いきや、カメラワークがうまかったのかもしれないが、顔での演技がすごかった。特に、目元は赤塚不二夫そのもの。

ストーリーは赤塚不二夫の栄光と挫折、それを支える編集者なのだが、どうも脚本がイマイチ。赤塚不二夫の哲学「利口になるな、バカになれ」は伝わってきたが、ヤマ場のスランプに陥った状況などは現実離れし過ぎていた。伝記を基にして実在の人物を描いている以上は、リアリティが失われ過ぎるのはよくない。この時期にアル中であったことを伏せるためなのかもしれないが、うーん、赤塚不二夫がアル中で、がんになっても酒を止めなかったというのはみんな知っていること。

ただ、漫画編集者の役割は本当に偉大だ。
これが実話かどうかわからないが、人気が低迷している『もーれつア太郎』を盛り返すのに、端役のニャロメを拾い上げたり、ヒット作は編集者と漫画家は本当に二人三脚で生み出されているのだという。

2011年4月30日
ウシュアイア

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