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日曜日のピュのpikaのレビュー・感想・評価

日曜日のピュ(1994年製作の映画)
3.0
ベルイマン脚本作品も見よう①
ベルイマンと父親のストーリーを息子ダニエルが監督した自伝的作品。
「ベルイマン自伝」を最近読んでいてちょうど読み終わったんだけど、見る前に読んでいたベルイマンの幼少期の思い出がそのまんま出て来て驚いた。
そのせいか再現映像としての感心が先行してしまって、映画そのものだけを楽しめたとは言えず勿体無かった。

子供の頃の断片的なエピソードの羅列がイメージとなって積み重なり、子供の頃と年老いた今との父親に対する意識の違いから、子供の頃では見えていなかった、理解できなかったものを見つけるという、実際に恨みに恨んで恨み通した父親に対するベルイマンの感情の変化をドラマのカタルシスにしている。
もろに私的な感傷をエンタテイメントたる映画へと昇華している反面、ベルイマン自身が老境に差し掛かった時期に執筆していることから、父親に対しての感情が変化した後に描いているという点で全体的に「厳しいが、優しい」という良き父親としての面が強く出ている。
母との喧嘩や、船の上での叱責など、自伝の中では言葉巧みに怨みのこもった言葉で表現されていたが、映画で見ると父親に寄り添うようなものになっている。
特にクライマックスからラストにかけての父とのサイクリングは、ストレートに感動的な演出になっていて純粋に泣ける。
ベルイマンがどうこう自伝的なものがどうこうとか、そう言った部分を何もかも取っ払って見ている分にはシンプルに楽しめて感動できる良作だと思う。
個人的な見るきっかけ云々の雑念が多すぎた笑

中盤での晩年のシークエンスにて看護師が長回しで語るシーンは、カメラが全く動かず固定なのはいいとしても、ベルイマンなら聞き手の方をクローズアップしていたのかもしれないと思ったり、全体的に無難な演出になっていて、その後の「妻がまだ生きている」と錯覚するシーンは自伝のベルイマンの文章の方が劇的だと思わされるほど演技が滑稽に見えてしまい、表現としてオリジナルに負けている感じがあるが、それは仕方がないことなのかなと。
死者に会うシークエンスは、ここだけ違う作品に切り替わったんじゃと思うレベルでぶっ飛んだホラー演出になっていて、怖いとか不思議とか以前にギョッとしてちょっと笑ってしまう。それが意図なのかはよくわからない。

先に今作のオリジナルである自伝を読んでいたことでこの映画に出てくるエピソードを本人の語り口で知っていたというのもあるけど、自伝そのものが既にベルイマンによる映画作品のように繊細で幻想的な魅力溢れる作品になっているので、別物とは言え比較してしまうことになったのはフェアじゃなかったかも。
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