こーじ

PASSIONのこーじのレビュー・感想・評価

PASSION(2008年製作の映画)
4.6
こんな恐ろしい映画は初めて見た。
濱口竜介特集の締めくくりに相応しい傑作。

かつての同級生の男女の集まりで、結婚報告をする2人。そこで男の方の過去の浮気が発覚する。

最初はリアリティで始まるのだが、貴子の部屋を訪れたあたりから次第に異世界に入り込んでいく。別に超常現象が起きるわけではないのだけど、会話がリアリティから飛び立ち演劇調を帯びていく。それに従い、登場人物たちの真実が浮かび上がっていく。
そうする事で、最初の方のリアリティ溢れる会話こそが欺瞞に満ちていることが分かるのも面白い。

人間は果たして真実に耐えれるのだろうか。
この映画が恐ろしいのは、真実を前にして踠き苦しむ様が、35歳になった自分にも決して他人事じゃないからだろう。

脚本、映像、そして何より役者の演技、それら全てが高水準で、特別な熱を帯びている。
素晴らしい所を挙げればもうキリがない。

濱口監督がこの映画を撮ったのは30歳の頃。もうその事実こそが恐ろしい。
そしてあの煙突のシーンのトラックは、たまたま映り込んだことを知り、この人は偶然にまで恵まれてると驚愕した。
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