くるぶし

PASSIONのくるぶしのレビュー・感想・評価

PASSION(2008年製作の映画)
4.0
はだかんぼうで人間は生まれてくるのに、みんながみんな、きったねぇオトナになるんだよーと目の前で叩きつけられたような居心地の悪さは完全に未体験。

卒業制作ということは濱口さんは20代、走り出し、映画監督への道に手を伸ばしている最中か…おそろしい。

寝ても覚めても→ドライブ・マイ・カー→偶然と想像→ハッピーアワーの順で見てきて、なるほど濱口監督の毒性は徐々にマイルドな表現になったのだなぁと感じる。

この作品はあまりにも剥き出しで、隠そうともしていないところが幼くて恐ろしい。
子どもが無邪気にアリの行列を石でごりごり潰していくのを楽しんでるような凶暴さ。

先に書いた“マイルドになった”というのは当然ながら毒性が薄まったという話ではない。
毒の強度はそのままに、本性を隠したまま物語のなかに擬態させるのがうまくなっているとでも言うべきか。

なにはともあれ、映画を見てこんなに”気持ち悪いやつばっかりだな!”と思ったのは初めて。
自分は思った以上に、ある一定の人間に対して潔癖症なのかもしれない…。まさか今まで気づかなかった感情を掘り起こされるとは驚いた。
これから世の中で怖いもの何?って聞かれたら、しばらくはPASSIONって答えると思う。

ゾクゾクするほどの脚本には度肝を抜かれたけど、日に日に“やっぱり気持ち悪い”という感想が勝つんだよなー。人間の愚かさは、あらためて教えてもらわなくても現実世界だけで十分っす。許容オーバー。
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