囚人13号

PASSIONの囚人13号のレビュー・感想・評価

PASSION(2008年製作の映画)
3.6
再見(2022)。アカデミックな作風にそこまで熱狂してるわけじゃないが、時代の寵児としてやはり観れるものは観ておきたい。

喪服を着たままでいる男の異様な存在感、冠婚葬祭入り乱れる序盤から無媒介的にフレームインしては場の空気を荒らす者、偶数人でいると険悪になるメロドラマ法則などこの頃から既に輪郭は出来上がってる。
キャメラの非人称性や主観ショットが一つもないのは三宅唱と共通してるが、他にも後の作品群を示唆する要素は被写体との距離/視線劇(アップ)/バスなど。

発言者が台詞を言い終える前に別の顔へ、アクションや視線に先立って「声」がカットを繋ぎ止める構造はカサヴェテスというわけでもないし、卒業制作なのでこれはプロへ向かいつつあるアマチュアの集大成として見られるべきかと。

対話によって切り返しを相対化する=人数毎にアングルやイマジナリーラインを変えつつ、人間を分かりやすく円環上に配置することで演劇からの巧妙な脱構築も果たす。
『秋刀魚の味』みたいな煙突のショット/長回しのティルトダウンも素晴らしいんだけど、それより好きである理由を羅列するシーンで悉く外見(主に顔)にしか言及してないのは象徴的だ。

例の暴力論なんてサミュエル・フラーの反芻でしかないんだけど、学校であんな詰められかたしたら泣いちゃうよね
囚人13号

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