クシーくん

ホンコン・フライド・ムービーのクシーくんのレビュー・感想・評価

3.6
日本ではMr.BOOでおなじみマイケル・ホイ主演の、例の如くに香港の小市民を描いた人情ドタバタコメディ。ちなみに本邦公開のマイケル・ホイ主演作の総称として必ずつけていた「Mr.BOO」が公開時外されたのは本作から。…もっとも懲りずに「新Mr.Boo!香港グワグワコケコッコ戦争」というしょうもない邦題もつけていたようだが(VHS用?)。まあ「ホンコン・フライド・ムービー」自体も「ケンタッキーフライドムービー」のパクリだからどっちにしろ…ではあるのだが。

衛生状態と接客態度は最悪だが味だけは良い、広東ダック(燒鴨)の料理店「老許記」を経営するホイ(マイケル・ホイ)。従業員をこき使いながら、あくせく小銭を貯める守銭奴だが、ある日、店の向かい側に外資のフライドチキン大型チェーン店「ダニーズ」が建ってしまう。たちどころに客を奪われてしまったホイはあの手この手で客を取り戻そうとするが、一向に上手く行かず。その上、口論になってウェイター(リッキー・ホイ)までダニーズ側に寝返る始末。ホイは経営難に陥ったお店を復活させる事が出来るのか…という話。

「半斤八两」の頃から基本のプロットとギャグセンスは変わっていないのだが、80年代も末になると垢抜けてきたというか、全体的にブラッシュアップされているのは良い変化。とはいえ料理を扱う作品でハエやゴキブリやネズミ(おそらく本物)が平気で出てくるのは流石。私が重慶大厦で飯を食った時も、料理に甲虫らしきものがはいっていたっけ。
アヒルとニワトリの着ぐるみを着たマイケル&リッキーの兄弟喧嘩は下らな過ぎて爆笑。こういう緩い笑いがこの頃の香港映画の魅力だな。良き時代の良き映画。
隣のライバル店の接客教育がスパルタ式で、お客様は全て正しいので客に殴られる練習とか始めるのも笑った。マネージャーが必勝の日の丸ハチマキを巻いて日本で研修をしてきたというご丁寧な設定からも分かるように、香港にも輸入されていたであろう、「日本式社員教育」を皮肉った描写だろう。存在感あったんだなあ、日本(過去形)。
お金を出して貰って心を入れ替えて真面目に働けば、割とすぐに軌道に乗って大型チェーン店を追い越すほどに持ち直してハッピーエンド、というのがやや安直というか能天気過ぎるが、まあマイケルホイの映画だし。そこまで凝った筋を求めても仕方あるまい。

奥さんがシルビア・チャンで美人過ぎるので、マイケル・ホイと釣り合わね~。トニー谷みたいなメガネ掛けてる小うるさい義母さんまで妙に若くて色っぽい。
サミュエル・ホイが「摩登保鑣」以来の登場。既に名実ともに香港では大スターになっていたサムが本人役でのカメオ出演。ライバル店の開店式でテープを切ろうとして電気コードを切ってしまい、感電するというマヌケなチョイ役だが、地味にタイトルを回収していた。

全編に渡って流れる劇伴が何故かジャック・タチの「ぼくの伯父さん」のパクリ曲。映画の作風自体は全然タチ的ではないんだけどなあ。マイケル・ホイがジャック・タチが好きそうなのはなんとなく分かる。

余談だが豊胸をネタにされていたアニタ・ムイはマイケル・ホイの前出演作「香港チョコチップ」と「お熱いのがお好き」に出演していたようだ。こちらも観なければ。
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