note

タイムリミットのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

タイムリミット(2003年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

マイアミの警察署長マットは末期がんの人妻アンと不倫関係を続けていたが、彼女と夫が焼死体で発見される。事件を担当する刑事は、別居中の妻アレックス。当夜のアリバイや電話の通話記録などから、自分が容疑者になると察したマットは、妻や警察内の目を欺きながら懸命に証拠を消し、真犯人を探すことになる…。

大好きなデンゼル・ワシントンが主演ということで本作の存在は知っていたが、ポスタービジュアルから良くある王道のポリスアクションだろうと思い込み、スルーしていたため初鑑賞。
だが、意外なことにデンゼルはヒーローではなく、姑息な男でとてもカッコ悪い。

警察所長のくせに殺人事件の犠牲者に対する関与が周囲にバレないように嘘をついて隠そうとして、それが余計に状況を悪くしてしまう。
事件の真相よりも、そっちがバレないかが気になってしまいハラハラするという一風変わったサスペンスの佳作だ。

アンの夫クリスは彼女に多額の保険金をかけていたが、アンは自分が癌だと分かると保険金の受取名義をマットに書き換え、クリスに対して離婚届を郵送する。

マットの署には麻薬取引で応酬した現金48万ドルがあった。
その金を癌の治療費にして2人で逃げようと提案するマットに、金を受け取ったアンもその気になるが、アンは待ち合わせ場所に現れず、マットは彼女の自宅へ。
その姿を隣人に目撃された翌朝、アンの自宅は放火により全焼。
現場からアンとクリスらしき焼死体が発見される。

携帯の通話履歴からアンが不倫していたことが判明する。
担当刑事でマットの別居中の妻アレックスは痴情の絡れから事件が起こったと推理。
不倫相手はマットなのだが、署長の自分がアンを殺したと周囲から疑われないため、電話会社からの通話記録ファックスをまだ届いていないと誤魔化したり、ファックスをパソコンにスキャンして改ざんするなど、発覚ギリギリでのマットの証拠隠滅がスリリング。
しかし、良く良く考えると不倫の証拠を妻から隠し通す夫というのが、なんとも情け無くて笑えてしまう。

アレックスの調べにより、診察した医師は病院には存在せず、アンは癌には罹っていなかったことが分かる。
もしかして自分は騙されたのか?アンは金を持ち逃げしようとしたのか?
では、あの焼死体は誰だ?
金は誰かが横取りしたのか?

謎が深まる中、アンに渡した麻薬取引の金を裁判の証拠として返せとFBIが迫ってくる。
今度はバレれば横領の疑いがかかり、どんどん窮地に立たされるマット。

アンの隣人の証言から作られた似顔絵はマットにそっくりでアレックスはマットを疑うが、友人の検視官がマットを庇う。
マットは検視官に事実を打ち明ける。
病院の指紋から、アンを癌だと診察した偽医師の身元が浮かび上がるが、マットが容疑者の泊まるホテルに押し入り、乱闘の末に容疑者を転落死させてしまう。
そこにはアンに渡したはずの麻薬取引の金が。
この容疑者が金のためにアンを殺したのか?
ホテルにアレックスも駆け付けるが、フロントで容疑者の名前を騙ったマットはフロントをぶん殴ってまで必死で逃げる。

その夜、マットの元に死んだはずのアンから電話が掛かってくる。
彼女は無事で、発見された遺体は遺体安置所から盗まれたもの。
全てはクリスの計画でアンが死んだ時の保険金詐欺だという。

マットがアンの元に向かうと、そこにはクリスもいて乱闘に。
落としたマットの銃でアンがクリスを殺してしまう。
事件は全てアンが仕組んだことだと判明。
マットを愛していたのは本当だが、貧しい暮らしは嫌だと語るアン。
邪魔な夫をマットに殺してもらい、降りた保険金で2人で逃避行するつもりだったのか?
保険金が降りてから、再び愛するマットに会い、殺して金を奪うつもりだったのか?…などと考えるとなんだか切実で哀れだ。

だが、アンは駆けつけたアレックスに撃たれて殺されてしまう。
麻薬の金に手を付けた問題は、検視官が届けようと思ったが道に迷ったと嘘をついてFBIに金を渡した。

全て事件が解決した後(つまり不倫の事実をマットが世間に隠し通した後)、恐らく真相を全て知っているはずのアレックスが「貴方が心配でならない」とマットとヨリを戻してハッピーエンドだ。

デンゼルが演じるとカッコ良く見えるが、不倫を隠し通すセコい主人公である。
自分の保身のためとはいえ、警察署長にあるまじきヤバい行為も犯すというのが、客観的に見ると不幸の連続で笑えてしまうのだが、人間くさくて「自分もそうするかも…」などと共感してしまう。

真犯人ではない主人公の状況が、どんどん悪化していく過程が、畳み込むような演出で展開されるのが見事。
難点は、そのために謎解きの面白みに欠けることと、色々やらかしているのに無罪になって、しかも美人の奥さんとヨリを戻す都合の良さだろう。

不倫を隠すためにジタバタするカッコ悪い男のサスペンス。
シリアスな雰囲気で、やってることはまるでコメディというアンバランスさが面白い作品である。
note

note