半兵衛

悪魔のいけにえ2の半兵衛のレビュー・感想・評価

悪魔のいけにえ2(1986年製作の映画)
4.3
前作のショッキングな刺激は越えられないことを監督はじめスタッフは悟っていたらしく、続編である本作は前作よりも更にぶっ飛んだ「恐怖の向こう側」を目指したような作品に。でもそれがトビー・フーパーのノリノリな演出や役者陣のハイテンションな演技とマッチして、常識を逸してしまった人間たちの狂宴が最高の面白さとなって観客にもたらされ自分も恐怖を超越した楽しさと笑いを味わっている感覚になってくる。ラストのチェーンソーVSチェーンソーによる対決なんてやってることは怖いのに何故か笑えてくるのもその象徴かも。

人肉を処理して食肉として提供する一家のクレイジーぶりも楽しいけれど、それ以上に彼らを追うデニス・ホッパーの狂った警官があまりにもぶっ飛びすぎていて彼らの狂った対決を見ているうちに観客はいつしか正義や悪を飛び越えた世界に到達する。特に一家の家に入り込んでしまったヒロインを助けるどころか家を破壊しまくり逆にヒロインを追い詰めるところは突然の出来事に困惑するレザーフェイス同様自分の常識が崩れていく感覚がもたらされること必至。

そして前作同様狂ったディナーで終盤を締め括るが、食人一家以上に狂った男の出現によりその食卓はぶち壊され食卓という重要な儀式の終焉=家族の終焉を示すように凄まじい崩壊劇が繰り広げられていく。『東京物語』の笠智衆は何も出来ずにただ家族が壊れていくのを優しく見守っていたけれど、この一家の父親的存在は自ら危害を及ぼす者に立ち向かうも呆気ない同士討ちに終わりそれを悟ったかのように一家を支えてきた長男の意思により家ごと破壊することで狂った一族のラストを締めくくる。

前作を踏襲しつつ、ある人間の意志が別のモノに受け継がれたかのようなエンディングもこの映画にぴったり。あと前作同様ヒロインにホットパンツを履かせて健康的な色気を撒き散らす演出に監督の異様なこだわりを感じずにはいられない、特に終盤非常階段を昇り降りするときのアングルは男性ならきっと釘付けにされ監督の狙いにハマってしまう筈(女性は「またやってるよー」と呆れているだろうけど)。
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