CANACO

スタンド・バイ・ミーのCANACOのネタバレレビュー・内容・結末

スタンド・バイ・ミー(1986年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

1986-87年公開のロブ・ライナー監督作品。同氏は『恋人たちの予感』(1989)や『ミザリー』(1990)などを撮った監督。スティーブン・キング原作の原題は『The body』。長年あえて避けてきた“感動もの”と言われる本作品を鑑賞。

舞台は、治安がよいとはいえないオレゴン州キャッスルロック。「行方不明になっている少年が、列車に跳ねられ死体のまま野晒しになっている」という噂を聞いた非モテ少年グループ4人が、線路づたいにその死体探しの旅に出る物語。

わずか89分の作品。経済的に自由ではない子どもにとって、家庭と教室は“世界”そのもの。差別や格差はすでにあり、理不尽な仕打ちを受けることが山ほどある。現実の、ある保育園の園長は「平気で嘘をつきます。子どもが無邪気だなんてとんでもない」と言った。虐げられている子どもが、それでも自分らしく、純粋なものを求めて生きていきたいと思うなら、苦しむのは当然だ。

傷を持つ子どもたちが、とても小さな世界で、小さな冒険をする。線路づたいに歩くだけの小さな旅で、本当のことを話す。“本当”をちゃんと受け取り、自分なりの視点で助言をする。“本当にそう思っている”ことを。

キングは心の傷や臆病さから見える“怖いもの”を描くだけでなく、人間の恐ろしさも描く。子どもは壁からも窓からも人間からも恐ろしいものをたくさん感じとる。特に感受性が強い少年期、小さな世界で恐ろしいものに触れ続けた結果、自ら命を落としてしまう子もいる。この小さな冒険によって、希望という砂金を見つけた子どもたちの時間は、ほかの何にも代え難い。

「ホラー版スタンド・バイ・ミー」と称される『IT』を先に鑑賞し、本作を後に見ると、キャラ設定からそれぞれの少年が抱える家庭トラブル、大人になってから過去を振り返る点に至るまで確かに似ていると感じる。スティーブン・キングがなぜこのテーマを2度書かなければならなかったのか、本人の口から聞いてみたい。

“あまりに実体験に即しすぎていたため、鑑賞後キングは号泣し、15分も席を立てなかった”という。(BANGER!「スティーヴン・キングを考察 『シャイニング』『スタンド・バイ・ミー』『IT/イット』モダンホラーの帝王が綴るアメリカ神話」より)

□メモ
主題歌に採用された「スタンド・バイ・ミー」は、ベン・E・キングが、自身が在籍していたアメリカのコーラスグループ「ドリフターズ」のために描いたものだったが、バンドマネージャーに却下された。グループ脱退後、1961年に発売。映画公開後に再発売して全英シングルチャートで1位を獲得したという。(wiki情報)
CANACO

CANACO