Dakota

スタンド・バイ・ミーのDakotaのレビュー・感想・評価

スタンド・バイ・ミー(1986年製作の映画)
3.5
・色褪せぬ 友との日々
【あらすじ】 
12歳の少年ゴーディ・ラチャンスは、クリス・チェンバーズら仲良し4人組で1959年の夏、「小さな旅」に出た。目的は、行方不明になっていた少年の死体を森の中で見つけること。メディアに取り上げられ「ヒーローになる」と心躍らせる。人口1200のオレゴン州キャッスルロックという地元の小さな町を飛び出し、4人はいつも以上に密な友との時間を過ごすのだった…。

▼ゴーディは本作の主人公。賢く落ち着いた性格で、小説を書くのが好きな少年だ。リーダー的立場のクリスは彼の親友で良き相棒。やんちゃでミリタリー好きなテディ、愛らしい気弱なバーンも一緒に4人でつるむ。学校の落ちこぼれの3人だが、ゴーディにとってはかえがえのない友達だ。

▼ 夏の日差しに照らされた、広大な自然の描写に惹きつけられる。4人はふざけ合ってはしゃいだり、夜通しくだらない話に興じたりしながら、死体現場までの長い道のりを歩く。自分たちにとって「全世界」である地元の小さな町を抜け出し、子どもたちだけで旅をする。彼らにとって、ワクワクする「ひと夏の冒険」だ。

▼そんな4人の姿を見ていると、同じように自然の中で遊び楽しんだ幼少の記憶が、誰しも呼び起こされるのではないだろうか。ノスタルジーな気持ちに浸れる、夏に観たくなる映画だ。

▼ゴーディとクリスは、互いに心に抱いていた弱みを見せる。クリスの家は「ろくでなし一家」として、町で悪評が立つ。自身も周囲からそのような偏見に満ちた目で見られることに、やるせなさを感じる。「誰も俺のことを知らない場所に行きたい」と涙ながらに語る。

▼ゴーディは父親からの愛情を感じられずにいた。彼には、アメフトの学生選手として活躍し、弟思いの兄がいたが、事故で亡くなってしまった。父は出来の良い兄を溺愛していた。クリスは寂しげにこぼす。「なぜ兄さんが死ななければならないの。僕が死んだほうが…」。

▼2人は互いの辛い思いに真剣に耳を傾け、励まし合う。自分たちの置かれた状況に負けず腐らず、静かに前を向いていく姿が印象的だ。

▼4人はついに、列車にはねられたブラワーの死体を、線路沿いの茂みに発見する。そこに現れるは、エース(24でおなじみ、若き日のキーファー・サザーランドが演じる)率いる町の不良軍団。死体発見の手柄を横取りしようと、現場から立ち去るようゴーディらを脅す。

▼これまでエースにやられっぱなしだったゴーディとクリスだが、この時ばかりは違った。クリスは気圧されながらも「さっさと帰って母ちゃんとヤってろよ」と挑発する。ナイフを取り出すエース。今度はゴーディが拳銃を突き付け、言い放つ。「俺のでかいヤツ舐めるか。弱いものいじめの好きなチンピラ兄ちゃん」。果敢に立ち向かい、見事にエースらを追い払う。ナイスアメリカンな悪口も最高にキマっている。

▼大人になった作家のゴーディは、この旅を題材に本を書く。当時を回想する形で、物語は進む。本の締めくくりに、3人とのその後の関係が記される。

▼長い人生の中、ずっと友達であり続けるのは容易ではない。疎遠になるのも珍しいことではないだろう。ただ、それでも良いのかもしれない。共に過ごしたかけがえのない時間は、決して色褪せることはないのだから。そして、時にそれは自分を支え寄り添ってくれる力になるはずだ。
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