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奇跡のarchのレビュー・感想・評価

奇跡(1954年製作の映画)
2.9
一家を襲った悲劇と「奇跡」についての物語。

本作はかなりもったいぶった作品だと思った。タイトルの通り(キリスト教的な)奇跡が起こる話なのだが、そこに至るまでの仰々しい積み重ねを丁寧にする。
カイ・ムンクの『言葉』という戯曲が原作にあるので、ドライヤーの宗教観かは定かではないが、キリストの死から約2000年後、形骸化した「奇跡」を上辺だけでしか信じない信仰を改めて問いただし、「奇跡」、ひいては神の存在を信じ直そうではないかというのが、最終的なメッセージとして用意されている。
そのためにキリスト教内における宗派の対立が描かれ、それ故に間を引き裂かれる男女や諍いが発生。地獄に堕ちるがいい!に呼応するように死産して母体である長男の妻も死んでしまう。また信仰にハマりすぎてイエス・キリストと勘違いした次男のわざとっぽい台詞回しで繰り出される"予言"。一見して意味不明で精神疾患を疑う言葉が実は…という展開。
奇跡を信じない人たち、奇跡を必要とする土台。それらを準備するまでがやはりわざとらしく、もったいぶった作品だなぁと感じてしまった。
最後、生き返れよかったねと単純に受け止められないのはそもそもそういうキリスト教的な説教が苦手だからだと思う。

ショットについては横長の宗教画を映画的に咀嚼したようなショットが素晴らしかった。あの部屋のセット、かなり大きいはずなのにカメラが近く、別カットで部屋の奥行きが分かるとびっくりする。
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