してちゃん

奇跡のしてちゃんのレビュー・感想・評価

奇跡(1954年製作の映画)
4.5
めちゃめちゃ良かった。劇場でみれてよかった。

キリスト教を真正面から扱って、ここまで嫌味なく説教臭くなく、詩を現出させた作品ってなかなかないと思う。

場面ごと丁寧に会話劇が紡がれる長回しの見せ方が、まずとても好み。

演出も余計なケレン味がないから素材がスッと受け取れて終始爽やか。

ベースがそうだと強調したい時も少しの引っ掛かりで十分だもんだから騒々しい仕掛けもいらずに、流れや構図に微妙なアンバランスを感じさせるだけで良くて経済的かつ美しさが損なわれない。

台詞も洗練されていて登場人物も皆自立した精神で基本サバっとしているから(頑固なようでしなやか、依存タイプのようで切り替えはやい、など)態度や思考にイライラする場面がないのも心地よい。

展開が最後の最後まで緊張感をキープするつくりになっていて、タイトルの付け方もそこに絡んで、構造がかなりかっこいい。
何も知らずに観れて良かった。

ヨハンネスと女の子(長男とインガーの娘)の夜のやりとりがものすごく良かった。こういう一幕と出会いたくて、映画や小説を求めているのだ!ありがてえ。