ココ

奇跡のココのレビュー・感想・評価

奇跡(1954年製作の映画)
3.8
ビクトル・エリセの瞳をとじてにて

「映画はドライヤー以降の奇跡を起こしてはいない」

という台詞からどれだけの作品なのだろうと興味を持ち池袋の新文芸坐へ。

精神病と診断された自らをキリストと呼ぶ男 ヨハネスは兄嫁のインガが腹の子と共に死去した後忽然と姿を消すが…

カメラワークがとても印象的だった。
カメラを中心に据え置いて部屋の内装とそこで営む人物を360度回転して撮影する冒頭シーン。
それだけでなく、ヨハネスが姪のアンネを膝に乗せて会話するシーンでは彼らを中心にカメラがその周囲を周る形で撮影をしており、回転させることで人物の心象をじっくり見つめられるようなつくりにしてるのかなと思えた。

奇跡のシーンでは棺に眠れるインガに逆光する背景の自然光が美しかった。
近年の映画は映像効果や複雑なストーリーに重きを置かれるが、本来は言葉や要約で言い表せない心を映像という視覚で示す手段なのではないだろうか。映像による物語の原点のようなものを感じた。
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