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奇跡のKSatのレビュー・感想・評価

奇跡(1954年製作の映画)
4.2
一つの家族における個々の宗教観の違いとそれによってもたらされる苦難。

無神論の長男、自らがイエスだと信じ込む次男、信仰の面で父と対立する仕立屋の娘との結婚を望む三男という絵に描いたような設定とか、信仰に取り憑かれ丘に上る次男が正気を取り戻すよう家族が神に祈る冒頭の場面など、ともすれば笑えてくる要素もあるが、全体を覆い尽くすのは重く、観念的な空気だ。しかも、基本的に室内劇なので、圧迫感もあり、余計に重苦しい。キャメラはひたすら人物を横移動でフォローし、各場面は長々と続く。

こういってしまうと、現地の人は「同じ北欧だからって一緒にするな」と嫌がるのかもしれないが、この映画も、スウェーデンのベルイマンの一連の映画も、内容における本質的な部分はほとんど変わらないように思える。もっというと、ラース・フォン・トリアーも影響受けてないわけがない。

文字通り「奇跡」といえる場面の数々は、とんでもないといえばそれまでだが、時間をかけて緊張感を保っているため、結果的には美しいものとして残る。改めて考えると、なかなか説教臭い映画ではあるが。
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