lingmudayan

今日われ恋愛す 第二部 争闘篇のlingmudayanのレビュー・感想・評価

2.5
国立映画アーカイブで鑑賞。山口博也さんという主演の轟夕起子研究家の方が買い取ったフィルムを復元したもので、その経緯などが記された資料が配布された。このフィルムが残念ながら保存状態に難があったようで、幾つかのシーンはほとんど見えないほど傷んでいた。

資料に掲載されている当時のプレスシートには「肉体至上の恋愛倫理を完膚なく追求する官能文学の映画化」と書いてあるが、この売り文句に騙されて映画館に入った観客がどれくらいいただろう。実際『今日われ欲情す』という原題がGHQの手で「恋愛す」に変えられたように、内容的にも乱倫な主人公(森正之)がかつての先生の妻に恋をして改心し清い付き合いをするという占領期らしい倫理観が打ち出されている。むしろ序盤で森が轟を籠絡させようとするところの方がゲスくて面白い。轟はキャバレーを回る歌手として2回歌唱するシーンがあり、ここで元宝塚スターとしての輝きが感じられる。特に終盤での2回目の歌唱シーンでは、闇落ちした宇野重吉が自分の手に入らなかったミューズとして轟を眺める形になっていて良かった。
lingmudayan

lingmudayan