イニャリトゥ監督の群像劇の描き方がとても好きだ。
『バベル』で感動したその見事な感情のパズルを組み立てる力は今作でも遺憾無く発揮されていた。
アフリカからの移民と、中国からの移民と、スペインの家族、それぞれが混じり合いながらお互いの欲望を剥き出しにしていく。
それぞれの登場人物からは他の登場人物の見えていないところがあって、それら全てを観客は見えているからこそ、彼らが関わり合う度に強いカタルシスが生まれる。
その作品内でお互いが隠している部分が、キャラクターを形成する上で非常に重要なものなので、それを知らずにそれぞれが生きていると自然とキャラクターに感情移入してしまう。
映画を見る者に何を見せて、作品世界では何を見せないかの取捨選択が秀逸で、求心力のある物語だ。