あなぐらむ

女獣のあなぐらむのレビュー・感想・評価

女獣(1960年製作の映画)
3.9
大蔵新東宝らしいエグいタイトルに反し、内容は正攻法な麻薬組織女刑事潜入モノ。当時日活等ではまだ添え物だった女優を中心に据えたアクションの先見性は注目に値する。東京の地下風俗もロケを活かして描かれ、80分弱のタイトな尺にまとめた見事な娯楽作。

主演格は新東宝の看板女優・小畠(小畑)絹子だが、実際に物語を駆動させるのは潜入刑事の松浦浪路。新東宝で言えば久保菜穂子系列のルックスで現代劇は珍しいそうだが、ガン捌きも巧みで菅原文太扮する麻薬Gメンと名コンビ。小畠は麻薬中毒演技や水責め被害など相変わらずの体当りぶり。
トレンチコートで決めた小畠さんの佇まいは、中々他の映画会社には居ないタイプで(当時)、復讐に燃える姿が凛々しい(相手が江見俊太郎なのは許せぬ)。曲谷演出はハリウッドクラシックなアクション映画の味わいがあり、たいへん小気味良い。銀座、新宿、浅草の景色は今となっては歴史的な価値もある。