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私の夜はあなたの昼より美しいのtakのレビュー・感想・評価

3.2
まだ携帯電話が普及してなかった頃。自宅の電話に書店から連絡が入った。
📞「ご注文のDVDが入荷したのでご連絡いたしました。」
その電話を受けたのは配偶者M。店員は続いてタイトルをフルサイズで読み上げた。
📞「えーとタイトルは「私の夜はあなたの昼より美しい ヘア解禁版」です。じゃ、よろしくお願いしまーす。」
帰宅した僕は質問攻めに合う。
👩🏻‍🦱「"ヘア解禁版"って言ってたわよ!どんなもんを買ったのよ!」
この騒ぎの後、家族で最初に携帯を持ったのは私ですw

ソフィー・マルソー大ファンの私だが、この頃、地方都市在住だと新作が生息地の映画館でかかることはまずなかった。当時のパートナーであるアンジェイ・ズラウスキー監督の作品が多い時期で、難解な映画やちと小難しい作品ばかりで、等身大のキャラクターを演ずるのはまれだった。ソフィーの露出が多いのはよしとしても(恥)、全編ニコリともしないのは「ラ・ブーム」以来ファンを貫いている者としては、ちょっと残念なのだ。

さて、この長いタイトルのズラウスキー監督作。脳の障害から言葉を忘れることを恐れる男が主人公。だから彼はとにかくしゃべり続ける。彼が出会った女には予知能力があった。超能力ショーめいた出し物で稼ぐのだが、それに頼る家族を苦々しく思っていた。二人は恋におち、海辺のホテルで愛し合う。男のトラウマとなっている過去を聞いた女は、次第に精神的に不安定になっていく。

二人とも逃れたい現在と過去があり、お互い共感した上での成り行きだとは思う。だけどそこに至るまでの過程が理解し難い。ジャック・デュトロンの台詞は、韻を踏んだフランス語の単語が羅列される。言葉遊びなのだろうが、これがストーリーを追う上でところどころ邪魔をする。

ズラウスキー監督作は「ポゼッション」が最高傑作だと思う。あれは映像で納得させられる計算ずくの強さがあった。本作でも、インサートされるトラウマとなった記憶も鮮烈な印象を残すけれど、筋やテーマを追うには映像も台詞も難解過ぎる。そしていつものズラウスキー映画のとおり、突然イチャイチャ、突然暴力、突然叫ぶ、突然泣く、突然脱ぐ。

しかし、ズラウスキー監督作の中でも屈指の映像の美しさがいい。二人が愛し合うスイートルームの様子。部屋に流れ込む風。変なサングラスかけて浜辺に寝そべるソフィーの姿も印象的な美しさ。当時「ロードショー」誌が、このシーンを切り取ったポスターを付録につけた。露出が多いソフィー出演作をよく取り上げていた編集部さんなので、エロ目的もあるだろうけど、あの場面はそれを超えた美しさがあったと思うのだ。映画には最後まで共感できなかったけれど。

👩🏻‍🦱「ソフィーの映画観る時、あんたは冷静な鑑賞眼を失ってしまうからね。」
😰(おっ、なかなか鋭い指摘💧)
👩🏻‍🦱「で、ヘア解禁版は楽しんだわけ?」
😩「…」

鑑賞記録はレンタルVHSで観た初回を記す。
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