シズヲ

ビッグ・ウェンズデーのシズヲのレビュー・感想・評価

ビッグ・ウェンズデー(1978年製作の映画)
3.6
ベトナム戦争前後のアメリカ、変わりゆく12年の歳月の中で青春をサーフィンに捧げた三人の若者の物語。南カリフォルニアで育ったジョン・ミリアス監督の実体験がモチーフになっているらしく、全編に渡ってノスタルジーが漂う。青春を謳歌していた夏→季節が変わりゆく秋→悲しみと共に停滞する冬→再起へと向かう春……と言った形で、主役三人の心情と彼らを取り巻く環境が“四季”と重ね合わせて描かれる詩情感が良い。三人の人生を捉えたブルース・サーティースによる撮影は相変わらずシャープで秀逸。

『アメリカン・グラフィティ』に後の80年代的な馬鹿騒ぎヤンキー感を上乗せしたような序盤の青春描写は正直苦笑いしてしまうけど、それでも三人の友情と日々を象徴する海やサーフィンの瑞々しさは印象深い。仲間達とガヤガヤつるんでいた日々も束の間、ベトナム戦争への召集をきっかけに時代は移ろっていく。頼れる兄貴分のような存在だったベアーの零落がいかにも“時の流れ”めいてて切なくなる。各々の人生を歩み出し、年月の中で喪失や変化と向き合い、それでもまた三人で集えば昔のように語らえるのが愛おしい。

終盤の“ビッグ・ウェンズデー”はそのダイナミックな撮影やスタンドダブルによるサーフィンも相まって圧巻の迫力。昔のように三人でつるみ、昔のように波へと挑む。まさしくキッズ・リターン。しかし彼らの場合、青春への決別でもあったんだなあ。全てをやり切ったマット達は後続へと想いを託し、零落していたベアーも過去への未練から吹っ切れる。彼らが未来へと再起していくことが確かに分かる結末の清々しさ。あのビーチの入り口から映画が始まり、あのビーチの入り口で映画が終わる円環構造が印象深い。
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