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エレファント・マンのおむぼのレビュー・感想・評価

エレファント・マン(1980年製作の映画)
2.7
エレファント・マンと呼ばれる奇形の男が地獄から蜘蛛の糸によって救い出されたが故に再び見世物になる不条理な話。
すべてのシーンにおいて、4Kリマスターでフィルムグレインがひとつも見当たらないぐらい鮮明なコントラストが活かされる光と影のある画作りがすばらしく、人間の証明を散りばめた結末は、報われているように見えてやるせない。

しかし、エレファント・マンの周囲の人物を、敵か味方かという視点でしか描けていない点で歯がゆい気持ちになった。
一般的にメディアは、見る者の共感を煽って、呼び起こすことができれば上等なものとされていると思う。
この映画も奇形の男という類まれなる環境の者に誰もが共感し、同情できるように作られている。

ただ、どんなに共感しようとも、所詮、客が映画を見に来る大きな理由は好奇心に他ならず、劇中にいる野次馬と変わりない立場であることが虚しい。
例えば、あの頭巾を脱いだら、どんな顔をしているかというのをじらして観客に待ち構えさせるような演出だった。
客席から遠い距離で見ることになり、役者の声や身振りといった演技が表現の割合の重きを占める演劇とは違い、カメラの距離が近く特殊メイクで奇形を見せつけるという映画ゆえの表現の多角さで、観客の陳腐な好奇心を掻き立てている。

だからこれは、SNSでいいねをたくさん集めた意見に感化されて掌返しの主張をし始めたり、陰謀論を唱え始める人とか、そういう類の愚かな共感が表現されてしまっていると思う。
それが奇形の男の実話ものという場で起きてしまっているならば、この映画はいわゆる感動ポルノだ。
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