リタ

エレファント・マンのリタのネタバレレビュー・内容・結末

エレファント・マン(1980年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「どんな人生を歩んできたか想像出来るか?
出来るはずがない」

エレファントマンに人間性を見出して
これまでの壮絶な不幸を慮った院長の言葉に

なんか院長は話通じなさそうだなと思ってたから
意外な言葉に涙出てきた。


ツインピークスとかマルホランドドライブ
みたいな雰囲気を想像して恐々見始めたから余計に
お伽話のような演出に不意打たれて心掴まれた


興行師のおじさん上手かった。
階段で凄むシーン不気味だったわー
モデルになった興行師は良い人だった説があるので
ちょっと気の毒なくらい怖いおじさんだったわ

あの子供がデクスターフレッチャーとは!
小柄な背丈の割りに意思の強そうな子だったな

そしてアンソニーホプキンスって
あんなに素敵だったなんて知らなかった!
そしてそんな訳ないのにサイモンペグかと思った笑



ジョンハート目当てに見たけど
麻袋とってからの言動の愛らしいこと!
ジョンすっごく可愛かった。
前半はほっこりしながら見てた

メリックのモデルになった方の写真を拝見しましたが
映画の容貌は結構忠実だった

モデルになった方も
新聞で呼びかけられ病院に寄付が集まり
入院継続できたと聞いて

ヨーロッパ富裕層のボランティア文化は
ヴィクトリア朝後期には既にあったんだなと知った
高度な社会だな
でも見世物小屋はあるんだよな。
これも擁護出来る部分はある制度だったとは言え。


ところで舞台女優の真意がよく分からなかったな

笑顔に影があるような、、
単にメリックを哀れんでいるのか?

アンソニーホプキンスやその奥さんには
見られなかった表情が抜かれてたから気になった
穿った見方かな

でも彼女のお陰でメリックが幸せ感じられたなら
彼女の真意などどちらでもいいものなのか、
いやそれも冷たいな


「頭は弱い、幸いなことに」
という台詞があったけれど

彼が知性を持たず
また美しい心も持たずに生まれてきた方が
幸せだった可能性もあって、


美しいものを愛していたメリックだから

美しく着飾って、美しい舞台を見て、
美しい人達から拍手を受け、

今日以上に幸せになることはないと
恍惚の中、絶望も相まり死を選んだのかもしれない

信心深い彼がそんな選択をするのは意外


生きとし生けるもの
知性だ心だなくたって尊いと思うし

死を選ばず生きてさえすれば
もっと幸せな出来事もあったかもしれないのに

否、聖書を暗唱するほど熱心な信者の彼にも
死を選ぶ権利があったっていいと私は思う

考えるほどに救いがない

ハッピーエンドを期待したけど
これが限界だったのかな?


母親は生きてるような口振りだったが
メリックは捨てられてしまったのかな

母親を探すことはしなかったね
有名になっても会いに来ないことで
諦めてしまったのだろうか


普通に寝てみたい、というのも
自分を卑下しているように感じる


切ないなんてものじゃなく
ひたすらに悲しい終わり方だと思った



ところで終わることはない、続いていく、って
どういうことなの?

哲学的トピックの多い映画だった。

体から解き放たれ魂は生き続けると言っている?
魂は不滅だという立場?



保護してくれた外科医を友、と呼んでいたメリック
外科医は友達だと思ってくれていたかな?

外科医本人も自らの真意を疑い悩んでいたけど。
悪人はそんなこと悩まないと思う
でも外科医が善人だったかどうかもわからない

何をもって善人とする?

カントは、同情が行動原理では
自己満足を得たいが為であって
その行動に道徳的価値はない的なこと言ってたが

外科医がメリックを保護するに至った行動原理は
同情に寄らないものだったと言えるか?
最初の涙からして同情ではないとは言い難い


善人だとしたらメリックの処遇に正解を見いだして
幸せにしてあげられた?

メリックの処遇の正解って何?

メリックは幸せだったと何度も感謝してた

善人だろうが違っていようが
幸せだったならそれでいいんじゃないか?

いや果たしてメリックは
本人の言う通り幸せだったと言えるか?

何をもって幸せとするのか


結局メリックは死ぬまで
誰とも対等な立場で話をすることは
なかったんじゃないかと思ってる

メリックが特別視されることなく、
自由に過ごせる日は果たして来なかっただろうか


自らの意思のもと、自由に、平等に生きる

それが幸せのように思うけど

誰かに庇護され特別視され
ヒロイックな陶酔に浸ることだって
幸せの選択肢にあってもいい



映画の中では最後まで
医師の問い掛けに答えは出なかったし
私もずっと考えてる

でもわからんよ、

やり切れない。
悲しい映画だったなぁ


音楽どれも好きだったな
リタ

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