三四郎

朱と緑 緑の巻の三四郎のレビュー・感想・評価

朱と緑 緑の巻(1937年製作の映画)
4.2
艶な悩ましげなお顔に綺麗な字、瞳から溢れ落ちる一粒の涙…そして命を絶つ。
高峰三枝子の大阪弁もいいが、ただ高杉早苗と三枝子の役が逆だったらもっと良かった。どう考えても、三枝子の方が東京の令嬢役に適している。
しかし不思議だ、最近当時のハリウッド映画ばかり見てるから…とても同時代の映画とは思えなくなってきてしまった。問題は役者の演技と表情の表現力。この映画では、三枝子と河村黎吉、そして上原謙、あと存在感のあった佐分利信が良かったと言える。

三枝子をファムファタール的な役にしたり、あそこまでコメディセンスがあるのだから、もっとコメディタッチの役をやらせても良かったように思う。彼女の才能に気づき、使いこなせたのは島津監督だけだったのだ…と今になって思う。それを受け継いだのが吉村公三郎かな。しかし、島津監督以外は皆、彼女の美しさにばかり気を取られ、また生まれながらの生粋のお嬢様であることにばかり意識が行き、彼女の演技の幅を狭めてしまったように思う。実に勿体無い、惜しいことをしたものだ。もちろん戦争へ突入するという…時代も悪かったのではあるが。育ちが良すぎて、汚れ役、ファムファタール、『裏町人生』や『椿姫』といった日陰者の役ができなかった、松竹がそれをさせたくなかったというのが残念。本人もそういった役を避けたのかもしれないが…。
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